トップ生物I第2部 生命の連続性第2章 発生>第2節 発生のしくみ

第2節 発生のしくみ

 

A 調節卵とモザイク卵

◆胚の調節性

教科書に示す胚の分割実験以外でも,下に示す2個の胚の融合実験が示すように,

胚の調節性をどの時期に失っていくかは,生物によって異なっている。

 

 

発生の研究史

ギリシャ時代以来,人間がどうして生まれてくるかについては,いろいろな考えが発表された。アリストテレスは,胎児のもとになるのは女の月経血で男の精液は発生を進める役割を果たすと考えた。この時代の発生に関する考え方は,器官は発生に伴って生じてくるという後成説とみなされる。

17世紀に入って,イギリスのハーベイは,ニワトリの胚を観察して,血液が最初に発生する部分であると主張した。この世紀の後半になると,前成説が台頭し始めた。そのころから顕微鏡が使用され,ニワトリの卵を主な材料として,観察が進められた。イタリアの解剖学者マルピーギは,卵の中に縮小された動物が存在するという前成説を唱え,オランダのスワンメルダムも同様な考えを発表した。一方,ハルトゼーガーらは,精子の中に人間の像(ホムンクルス)が入れ子になって入っているという精原説と,そのもとになる精子の図を描いた。グラーフとステンセンは,ウサギの卵巣の中で卵を発見したと主張したが,彼らが見たのはろ胞であった。この発表も前成説の根拠とされた。

18世紀に入って,ヴォルフがニワトリの初期発生を調べ,各器官は発生の初めから存在するのではないという後成説の根拠を与えた。また,発達した顕微鏡による観察も,後成説を支持した。

19世紀に入ると,現代発生学の祖といわれるベーアが現れ,各種の動物の発生を比較して,各胚葉から形成される器管は動物の種類に関係なく一定であるということを明らかにした。また,ヘッケルは,発生反復説を唱え,発生と進化と関連づけた。また,ワイズマンは,個体の死で体細胞は死ぬが,生殖細胞は連続して子孫へつながっているという生殖質連続説を発表した。ワイズマンの友人のルーは,実験的に発生を調べる実験発生学を起こした。今世紀に入って,実験発生学は進展し,フォークトは局所生体染色法を開発し,胚の予定運命を明らかにした。シュペーマンは,イモリの胚で,発生のしくみを実験的に調べ,形成体と誘導現象を発見した。

 その後,発生のしくみに関する研究が進んでいる。今世紀の後半になり,遺伝子の働きが解明されるとともに,その成果をもとにして発生を研究する発生生物学が誕生した。発生生物学では,動物の組織や細胞培養が広く利用されるとともに,受精,発生,形態の分化などを,分子レベルで解明しようとする研究が盛んに行われている。

17世紀

 前成説の全盛

1672年 グラーフ,ステンセン

  ろ胞の発見

1759年 ヴォルフ

  発生の原理

1828年 ベーア

  胚葉説

1868年 へッケル

  発生学の創立

1881年 ルー

  実験発生学の創設

1892年 ワイズマン

  生殖質連続説

1922年 フォークト

  局所生体染色法による研究

1924年 シュペーマン

  誘導・形成体の発見

1930年〜

  実験発生学の発展

 

 

 

B 胚の予定運命と決定

◆予定運命

フォークトの行った生体染色

の方法は,次のようであった。

すなわち,中性赤またはナイ

ル青などの水溶液に寒天片を約1週間浸す。寒天

片が,これらの色素液によって染まったら,これ

0.2mm立方ぐらいの小片に切断する。この小

片を卵の適当な部位にあてがい,上からおもしを 

のせて数十分放置する。教.図15は,フォークトがイモリの一種について行った

実験の結果を示すものである。上左図は,胚を側面から見たところで,胞胚期の

もの,上中央図は原腸胚期,上右図はその胚が神経胚となったところを示してあ

る。この3つの図について,数字を付した部分のそれぞれが,どのように移動し

たかをたどらせるとよい。2段目の図は原腸胚の初期に染色したもので,発生が

進んで卵黄栓ができてその大きさがかなり減少した時期に,各点がどのように移

動したかが右図によって示される。胚の原基配置についての研究は,最初は有尾

両生類について行われたものであるが,現在では,魚類・両生類・は虫類にまで

及んでいる。

 

探究活動 2.調節卵の分割割球の発生

 

C 形成体と誘導

◆形成体

脊椎動物の初期発生で予定外胚葉に働きかけて,中枢神経の形成を引きおこす

と共に,それ自身は,頭部中胚葉・脊索・体節に分化し,胚の形成の中心として

働く胚の部分を指す。形成体の存在について最初に気づいたのはシュペーマンで

あるが,つづいて,マンゴルド,ホルトフレーターなどのドイツの学者によって

著しく研究が発展した。形成体のはたらきの本質については,すでにいろいろな

説があるが,形成体と反応を受ける組織とを,ミリポア・フィルターでへだてて

も誘導が成立するような物質であることは事実である。「この物質はタンパク質で,

タンパク質分解酵素によって作用がそこなわれる。作用部位はかなり不安定な性

質らしく,放置すると誘導そのものが変わってくることがある」というのが大体

の現時点での理解である。

 

◆誘  導

形成体の項で述べたように,誘導は形成体に含まれている特殊な物質によると

いう見解に対しては,いわゆる誘導物質によって,組織の状態に変化がおこり,

そのような状態が誘導をおこすのであって,特定の誘導物質など考えられないと

する反対論もある。

 また,細胞の内部にまではいりこんで情報を伝えるなんらかの活性物質の存在

によると考えるより,分化すべき細胞の表面へのある種のはたらきかけによるも

のとみたほうがよいとする考えもある。

 

◆分化

1924年,シュペーマンとマンゴルドによって発生運命の決定のしくみの大要が

示された。現在では2つの細胞群が接触したとき一方が他方の発生運命を決定す

る誘導作用が連鎖的に起こって,各胚葉からいろいろな組織や器官が形成されて

いくと考えられている。オルガナイザー(形成体)発見とその誘導連鎖の解析は,

最初両生類で行われたが,原索・脊椎動物全般にわたってその機構が明らかにな

り,発生の根本原理として認められている。

 

実験4 資料学習 発生のしくみの研究

 

 

 

 








本サイトに掲載された記事や画像の無断転載を禁じます。
Copyright(C) 2007 SHINKOSHUPPANSHA KEIRINKAN CO.,LTD. All rights reserved