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実験2〔探究活動〕 アリのフェロモン

教科書p.159160 所要時聞1時聞

 

 

【指導目標】 アリの道しるべフェロモンと生物検定について理解する。

【準備】 (1)  アリ飼育容器(簡単にはガラス製バイアル。大規模なものでは透明な大

小の箱を用意し,小の箱の一部に孔を開け,大の箱の中に置いて石こうで固める。小

の箱が巣で,大の箱がエサ場となる)。

(2)  ろ紙,筆,エタノール,ガラス棒,試験管,アリ。

【準備上の留意点】 (1)  アリの飼育容器に土を入れるとカビが生えやすくなるた

め,試験管やガラス製のバイアルで飼育するほうが良い。手間もかからず簡単である。

(3) アリの種の同定は難しい。校内でもよく調べると20種近くも採集されてしまうこ

とがある。インターネットのwebサイトに「日本産アリ類の分類」があるが,素人が

正しく検索できるほどの生物ではない(http://ant.edb.miyakyo-u.ac.jp/HTMLS/ANT.HTM)

 

実験A 道しるべフェロモンの抽出

【方法上の留意点】 (1)  道しるべフェロモンの効果はあまり長くないことが知られ

ている。1匹当り数分間といわれている。道しるべが長持ちするとアリ自身どの道し

るべを使ったらよいか,混乱してしまうだろう。

(2)  また,種特異性は低い。要はエサにたどりつければいいのである。

(3) アリがフェロモン上をたどったかどうかは,抽出成分をS字状に描いて対照(エタ

ノール)S字線と混じり合わせて8の字を引き,検定する(下図左)

 

【化学構造の研究史】 最初に化学構造が判明した道しるべフェロモンはテキサスハ

キリアリ Atta texanaのそれである(ツムリンソン,1971)。最も強い活性成分は4-

チルピロール-2-カルボン酸メチルで(下図右),収量は3.5kgの働きアリから約150μg

あった。人工的に合成した化合物を生物検定によって調べてみると,ピロール環の窒素

2位のカルボン酸の位置関係が最も重要な活性発現要因と考えられた。4位のメチル

基は別の基(Cl-Br-)に置換されてもそれほど影響を受けなかった。

 

実験B フェロモン分泌部位

働きアリの分泌腺は腹部にあるが,熱帯雨林に生活するハリナシバチの道しるべフェ

ロモンは大顎腺から分泌される。

 

実験C シロアリの道しるべフェロモン

【方法上の留意点】 (1)  紙が乾燥しているとうまくいかない。紙にボールペンで線

を描いたら霧吹きなどで紙を湿らすこと。

(2)      ボールペンは何色でもかまわない。ペンの会社もゼブラ,ユニ,三菱,コクヨ,パ

イロットなど,どのボールペンでも可。

(3)      ボールペンのインキの溶剤がエチレングリコールモノメチルエーテル(別名フェニ

ルセロソルブ)で,これに感応する。ボールペンに含まれている溶剤は他の物質であ

る場合もある。

 

【参考】 シロアリでは尻の近くの腹板腺から道しるべフェロモンが分泌される。あ

るシロアリでは幼虫期には道しるべフェロモンとして作用するが,成虫期には性フェロ

モンとして働き,雌からのものは雄を,雄からのものは雌を誘引することがわかってい

る。

以下に森林総合研究所の大村和香子氏の資料より引用する。

イエシロアリ(Coptotermes formosanus Shiraki)とヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus

Kolbe)は同じミゾガシラシロアリ科に属し,ミゾガシラシロアリ科のシロアリの道しる

べフェロモンは共通で(Z,Z,E)-3,6,8,-dodecatrien-1-olと同定されている。

ボールペンインクに含まれているジエチレングリコールモノメチルエーテルやジエ

チレングリコールモノエチルエーテルがこの道しるべフェロモンと立体構造的に類似

しているため,シロアリの道しるべフェロモン受容器が誤認し,インク跡をたどると考

えられている。イエシロアリでもヤマトシロアリでもこの実験に使用するのに問題はな

い。ただし,ヤマトシロアリの方が動きが鈍いので実験に使いやすいと思われる。

 また,木材腐朽菌「キチリメンタケ」は,この(Z,Z,E)-3,6,8,-dodecatrien-1-olを生産す

る。この菌がこの物質を生産する生態的意味などはまだ判っていないが,腐朽した木材

をメタノール等で抽出して,抽出液で線を書いてやれば,シロアリはインク同様それを

たどる。

イエシロアリとヤマトシロアリを混ぜると,直ちに激しくかみ殺し合うので,混ぜて

はいけない。イエシロアリの方が大きく,勝つ。同種のシロアリ同士でもコロニーが違

うと「けんか」をする。これは,お互いの体表ワックスの組成がコロニーごと,種ごと

に少しずつ異なり,それを瞬時に感知し,仲間あるいは敵を認識するためと考えられて

いる。これはシロアリ同様,社会性を営むアリについても知られている。

 進化系統からいえば,シロアリはゴキブリと近縁で,アリとは遠い関係にあり,さら

にアリはシロアリの天敵といってもいいくらいである。例えばクロアリ自体を有機溶媒

で抽出した抽出液をろ紙に含浸させて,シロアリに近づけてやると激しく攻撃する。特

に兵隊アリ(頭部が茶褐色で大きめ)は攻撃的で,うっかり手の柔らかい部分をはさま

れると痛いので,注意が必要。イエシロアリの兵隊アリは頭部中央から粘性の防御物質

を出し,敵の行動を止めるが,防御物質自体に毒はない。

 

参考文献  湯嶋健『昆虫のフェロモン』(東京大学出版会,1976

    石井象二郎ほか『昆虫行動の化学』(培風館,1978

 

 










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