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第2節 天然繊維と合成繊維
◆合成繊維の分類
合成繊維は,人工的に重合反応を行わせて合成した鎖状高分子化合物を,繊維状
にして取り出したものである。半合成繊維(アセテート),再生繊維(レーヨンなど),
無機繊維(ガラス繊維や金属繊維)などは普通合成繊維には含めず,まとめて人造繊
維(化学繊維)という。合成繊維は,原料により,次のように分けられる。
ポリアミド系;ナイロン ポリエステル系;デークロン,テリレン,テトロン
ポリビニルアルコール系;ビニロン ポリ塩化ビニル系;ロービル,デビロン
ポリ塩化ビニリデン系;サラン,クレハロン
アクリル系;オーロン,アクリラン,クレスラン,ボンネル,カシミロン
ポリオレフイン系;ポリエチレン,ポリプロピレン
フルオロカーボン系;テフロン ポリウレタン系;スパンデックス
●綿の断面 木綿はセルロース分子からなり,その平均分子量は約30〜50万の
天然高分子化合物である。セルロースはβ−グルコースが1,4−グリコシド結合した
長鎖状の多糖類であり,セルロース分子が多数集合したミクロフィブリルが,さら
に並んで繊維をつくっている。乾燥植物体中の主成分(約30〜50%)であり,最も
豊富な生物資源で,ワタの繊維はその98%がセルロースである。
◆レーヨン
再生セルロースからなる人造繊維をレーヨンという。ビスコースレーヨンのみを
指していうこともある。現在,ビスコースレーヨン,キュプラがある。
(1) ビスコースレーヨン 木材パルプを原料とする。濃アルカリでアルカリセル
ロースとし,これに二硫化炭素を加え,セルロースキサントゲン酸ナトリウムと
する。これは,アルカリ水溶液に可溶であり,希NaOH水溶液で溶かすと赤橙
色のコロイド溶液(ビスコース)になる。
(C6H10O5) n+nNaOH→(C6H9O4・ONa)n+nH2O
(C6H9O4・ONa)n+nCS2→(C6H9O4・OCS2Na)n
ビスコースは熟成中に分解し,再びセルロースになる,これを紡糸して後処理を
行い,レーヨン糸とする。重合度は約300である。
(2) キュプラ 銅アンモニア法でつくられるレーヨンで,銅アンモニアレーヨン
ともいう。商品名はベンベルグという。原料はコットンリンターまたは木材パル
プである。製造法は次の通りである。まず,塩基性硫酸銅(II)に濃アンモニア水
を加え銅アンモニア液をつくり,原料セルロースを加える。
Cu(OH)2+4NH3→[Cu(NH3)4] (OH)2
2(C6H10O5) n+n [Cu(NH3)4] (OH)2
[(C6H9O5)2[Cu(NH3)4]]n+2nH2O
[(C6H9O5)2[Cu(NH3)4]]n+n [Cu(NH3)4] (OH)2
[ [(C6H8O5)2Cu] [Cu(NH3)4]]n+4nNH3+2nH2O
さらにNaOH水溶液を加え,セルロースを完全に溶解し,紡糸原液とする。こ
れを紡糸し,硫酸で元のセルロースにする。
◆アセテート
セルロースを酢酸エステルにしたアセチルセルロースを骨格とする繊維である。
原料は木材パルプと無水酢酸で,まずトリアセテルセルロースをつくり,これを一
部加水分解し(重合度180〜230,酢化度約55%)アセトンに溶かし,乾式紡糸する。
[C6H7O2(OH)3] n+3n (CH3CO)2O
→[C6H7O2(OCOCH3)3] n+3nCH3COOH
[C6H7O2(OCOCH3)3] n+(3−x) nH2O
→[C6H7O2(OCOCH3) x (OH)3-x] n+(3−x) nCH3COOH
アセチルセルロースは,プラスチックやフイルムなどとして使用される。
◆セロハン
セロハンは,ビスコースより得られる再生セルロースフイルムである。1908年,
スイス人のBrandenbergerにより発明された。グリセリン10〜20%を含み,フイ
ルムの厚さは0.022〜0.041mmである。透明性がよく,水蒸気をよく通すが,ビニ
ル樹脂などを塗布した防湿セロハンは水蒸気を通さない。セロハンは,包装材料
や半透膜として用いられている。粘着剤を塗布したものはセロハンテープ(セロテ
ープ)として利用されている。
なお,キュプラをフイルムにしたものはキュプロフアンとよばれている。
►シュバイツァー試薬とキュプラ
1857年,シュバイツァーによりキュプラ(銅アンモニアレーヨン)がつくり出さ
れ,1919年,ベンベルグ社によってキュプラが工業化された。銅(U)イオンのア
ンミン錯体[Cu(NH3)4](OH)2の溶液をシュバイツァー試薬という。90℃に熱した硫
酸銅(U)水溶液に炭酸ナトリウム水溶液を加えてできる沈殿CuSO4 · 3Cu(OH)2を
集め,メチルレッドが黄変するまでアンモニア水に溶かし,水酸化ナトリウム水
溶液を加えてつくる。深紫青色。セルロースを溶かす性質がある。実用的には安
定剤としてグルコースを加えることがある。
この液に木綿リンターあるいは高a木材パルプなどの原料セルロースを溶かし,
さらに水酸化ナトリウム溶液を加えてセルロースを完全に溶かす。この紡糸原液を
凝固浴の水中に繊維状に押し出し,さらに3.5〜7.5%の30℃の硫酸浴中を通し,
脱銅再生してキュプラとする。
►ナイロン
ナイロンは,ポリアミド系合成繊維を総称する語として今日用いられている。ア
ジピン酸とヘキサメチレンジアミンからつくられる6,6-ナイロンのほかに,ε-カ
プロラクタムから得られる6-ナイロンや,そのほか6,10-ナイロン,11-ナイロ
ン,9-ナイロン,4-ナイロンなどがある。
ナイロンの命名は,H2N(CH2)mNH2とHOOC(CH2)n−2COOHから合成されるもの
をm,n-ナイロン,H2N(CH2)n−1COOHまたは
|
|
|
HN(CH2)n−1CO |
から合成されるものをn-ナイロンと呼んでいる。
ナイロンは摩擦に対する耐久性が大きく,希酸や塩基などの薬品にも侵されにく
いので,くつ下・衣服・漁網・化学工業のろ布など広く使われている。
6,6-ナイロンを初めて合成したのは,米国のカロザースで(1936年),その後ド
イツでは1940年に6-ナイロン(パーロンL)と,6,6-ナイロン(パーロンT)を出し,
わが国では1941年に6-ナイロン(アラミン)を出している。
6,6‐ナイロンの合成では,ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モルを水に
入れて混合し,生じた50〜70%の塩水溶液に少量の酢酸を加える。これを釜に
仕込み不活性ガスを満たして加熱する。生じた水蒸気は圧力を15000〜20000hpaに
調節しながら逃がし,約280°Cで重合させる。冷却後,ポリマーをペレットとする。
6,6-ナイロンは約260°Cで溶融するので,溶融紡糸で繊維とする。
6-ナイロンの合成では,カプロラクタムを溶融し,これに少量の水などを加えて
220〜300°Cに加熱して重合させる。6-ナイロンの融点は220°Cで,溶融紡糸で繊
維とする。
►ポリエステル
ポリエチレンテレフタレートが,ポリエステルの主なものである。これは,テト
ロン(日本),テリレン(英国),ダクロン(米国)などといわれ,初期弾性が高く,
吸水率が0.4以下で非常に低い。この繊維は,衣料品として多量に市販されている。
ポリエステルの合成は,通常2段階で行われる。まず,加圧下で約250°Cに加
熱し,ビス-b-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)をつくる。
HOOC-C6H4-COOH+2HOCH2CH2OH
→HO(CH2)2O2C-C6H4-CO2(CH2)2OH+2H2O
次にBHETを高温・減圧下で縮重合させて,ポリエチレンテレフタレートを得る
(270〜300°C,1mmHg,触媒Sb化合物)。
nHO(CH2)2O2C-C6H4-CO2(CH2)2OH
→H
O(CH2)2O2C-C6H4-CO
nO(CH2)2OH+(n−1)HO(CH2)2OH
BHETをつくるとき,原料としてテレフタル酸ジメチルo-C6H4(CO2CH3)2を用
いる方法もある。この場合は,常圧で150〜230°Cに数時間加熱する。
H3CO2C-C6H4-CO2CH3+2HO(CH2)2OH
→HO(CH2)O2C-C6H4-CO2(CH2)2OH+2CH3OH

◆アクリル繊維
アクリロニトリルCH2=CHCNはきわめて重合しやすい物質である。ポリアク
リロニトリルをジメチルホルムアミドに溶解して紡糸したものがオーロン(米国)で
ある。塩化ビニル56〜60%にアクリロニトリル44〜40%を加えて共重合させ,こ
れをアセトンに溶かして紡糸したものはダイネル(米国)といわれている。カネカロ
ンも両者の共重合繊維である。アクリロニトリルと少量のビニルピリジンまたはビ
ニルアミンとを共重合させて,染色性をよくしたエクスランというものもある。
●炭素繊維
有機高分子繊維を800〜3000℃の一連の段階的加熱処理をして得られた繊維。
炭素繊維は,炭素材料としての性質と繊維としての性質を兼ね備えている。性質の
特徴を要約すると,@軽い,A細く,長く,しなやか,B引っ張り強さおよび引っ
張り弾性率が高い,C潤滑性,耐摩耗性が優れている,D熱膨張係数が小さく,寸
法の安定性が高い,E極低温での熱伝導率が小さい,F耐熱性が高い,G導電性で
ある,HX線の透過性が良好である,I化学的に安定で,酸・塩基あるいは各種の
溶媒に侵されない,などがあげられる。@〜Cの性質を利用して,飛行機の二次構
造材,ロケット,ヘリコプター,ゴルフクラブ,ラケット類,パワーボート,釣竿,
洋弓など,D〜Fの性質から宇宙機器,ロケット,ベアリング類など,Gの性質か
ら事務機器,電波遮へい,除電TVアンテナなど,Hの性質からX線医療機器な
ど,Iの性質から化学バルブなどに実用化されている。現在研究開発段階にあるも
のとして,飛行機の一次構造材,宇宙ステーションビーム材,リニアモーターカー,
自動車板ばね,駆動軸,産業ロボット,遠心分離機,風車ブレード,楽器,二次電
池,燃料電池,海洋エネルギー機器などがある。
◆ビニロン
わが国で開発された合成繊維である。量産当初,酢酸ビニルCH2=CHOCOCH3は,
アセチレンに酢酸を付加させてつくった。これを付加重合させると,ポリ酢酸ビニ
ルという鎖状の高分子化合物ができる。これを酸またはアルカリで加水分解して酢
酸基を除き,ポリビニルアルコール(ポバール)に変えた後,水に溶かして紡糸口から
硫酸ナトリウムの水溶液中に押し出すと繊維になる。しかし,このままでは水に弱
いので熱処理し,さらにホルマリンで表面を処理したものがビニロンである。

ビニロンは,ポリビニルアルコールを主原料としてつくられる合成繊維の一般名
である。ポリビニルアルコールは1924年にドイツで発見されているが,これを合
成繊維に大成したのはわが国の桜田一郎氏を中心とする研究陣であって,1939年
のことである。当時この合成繊維のことを合成一号とかカネビアンとかよんでいた
が,1948年にビニロンと称することになった。これを最初の量産に移したのはク
ラレ(倉敷レイヨン)で,1950年ごろから市場に出るようになった。
ビニロンは長い繊維のままで漁網や織物に用いられるが,また短く切って他の繊
維と混ぜて糸に紡ぎ,衣料に用いられる。
<参考サイト>
ポバール(クラレ) http://www.poval.jp/japan/poval/g_info/index.html