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第1節 プラスチック
●合成樹脂 石油,石炭,天然ガスのような化石資源を原料とした低分子量の化
合物から,重合,重縮合,重付加などにより得られる高分子量(分子量1万以上)の
樹脂状物質のことである。熱すると軟化し塑性を示し,任意の形に成形できるが冷
やすと固化する過程を可逆的に行うことができる熱可塑性樹脂が主で,ポリエチレ
ン,ポリプロピレン,ポリ塩化ビニル,ポリスチレンなどがその例である。また,
熱すると反応が起こり三次元高分子を生じると同時に硬化を起こし,可塑性を再現
できない熱硬化性樹脂があり,フェノール樹脂,メラミン樹脂,尿素樹脂などがそ
の例である。家電部品,パネル,パイプ,フィルムのような成形品のみでなく,接
着剤,塗料,クッション材などとして合成樹脂は日常生活のあらゆる分野に広く使
用されている。
◆熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂
熱可塑性樹脂は一次元構造の固体高分子で,加熱すると融解し,冷却すると固体
になる。また,適当な溶媒に溶解する。熱可塑性樹脂は繊維に利用されるものが多
く,次のような樹脂がある。
塩化ビニル樹脂,塩化ビニリデン,塩化ビニル共重合体,酢酸ビニル樹脂,ポリ
ビニルアルコール,ポリビニルアセタール,ポリエチレン,ポリプロピレン,スチ
レン樹脂(ポリスチレン),アクリル樹脂,ポリアミド,ポリエチレンテレフタレー
ト,ポリカーボネート,フッ素樹脂
熱硬化性樹脂の硬化物は三次元構造の固体高分子であるが,硬化前は分子量の比
較的小さい熱可塑性樹脂である。これが加圧・加熱などの操作で架橋構造を生じる
ことにより,三次元構造の不溶・不融の硬化物となる。熱硬化性樹脂には,尿素樹
脂,フェノール樹脂のほか,メラミン樹脂,エポキシ樹脂,ケイ素樹脂などがある。
►ポリエチレンの製造
ポリエチレンはエチレンの付加重合で合成され,いくつかの合成法がある。最初
にポリエチレンを製造したのはイギリスのICI社で高圧法が開発された。1950年
代になってドイツのチーグラーが,低圧法による合成を,彼の発明したチーグラー
触媒TiCl4-Al(C2H5)3を用いて成功した。次に合成法を示す。
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(1) 低圧法温度 60〜100°C,圧力1000〜10000 hPa,チーグラー触媒を用いる。 |
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(2) 中圧法 温度100〜150°C,30000hPa,触媒はCr2O3-SiO2-Al2O3 温度200〜250°C,70000 hPa,触媒はMoO3-Al2O3 |
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(3) 高圧法 温度55〜100°C,300000〜1400000 hPa,触媒はジエチルペルオキシカーボネート |
►ポリプロピレンの製造
プロピレンがチーグラー−ナッタ触媒TiCl3-Al(C2H5)3で重合体になることが発見さ
れてから,1957年にイタリアで初めてポリプロピレンの工業生産が始まった。重合
条件は,室温〜80°C,1000〜10000hPaで,ヘキサンやヘプタンの溶媒中で反
応させる。
◆熱可塑性樹脂の性質
熱可塑性樹脂の性質を,下表に示す。これらの性質は代表的なものの例であり,
平均分子量や製法により変化することもある。

●ソフトコンタクトレンズ ソフトコンタクトレンズは,吸水し膨潤軟化する親
水性のポリメタクリル酸ヒドロキシエチル(ポリ2−ヒドロキシエチルメタクリレー
ト)が主成分として使用され,橋架け剤として少量のジメタクリレートが含まれて
いる。涙で膨潤した状態でちょうどよい形,大きさ,屈折率を示さなければならな
いため,乾燥時と膨潤時の膨張率と屈折率を計算して切削してつくられる。ハードコ
ンタクトレンズはポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタクリレート)で,無機ガラ
スより軽いが同じような適当な屈折率をもち,割れない。

●繊維強化プラスチック(FRP) エンジニアリングプラスチック中にガラス繊
維や炭素繊維を加え耐熱性や強度を高めたもの。ガラスを繊維状に引き伸ばしたも
の(直径0.005〜0.02mm)は強度200kg/mm2で,ナイロンやポリエステルの2倍
となる。これをナイロン,テトロンなどに埋め込むと芯となるガラス繊維の伸度が
小さくなり,圧縮や引張りに強くなる。高温になって,ナイロンやテトロンが軟
化しても,ガラス形状を保つため,200℃近くまで使用に耐え得る。ガラス強化プ
ラスチックは質量が鋼材の1/3だが,強度は鋼材と同程度である。
◆フェノール樹脂
普通,ベークライトと呼ばれ,合成樹脂のうちで最も古くから知られている。こ
れはベータランドによって1909年に初めてつくられたもので,フェノールとホル
ムアルデヒドが原料である。1996年の生産量は約29.4万tである。
フェノールにホルムアルデヒドを作用させたとき,ホルムアルデヒドが結合する
場所は,フェノールのオルト,パラの位置である。その場所を*で示すと,次のよ
うになる。

塩基を触媒として反応させると,第一段階として次のような反応が起こり,これ
らの混合生成物をレゾールという。レゾールは溶媒に可溶で,これを脱水して接着
剤や塗料に利用される。

第2段階として,-CH2OHとフェノールのオルトまたはパラの位置のCHとの間
で縮合反応が起こり,最後にフェノール樹脂ができる。フェノールに3か所反応す
る場所があるので,フェノール樹脂は三次元的に網状構造を形成している。そのた
め,硬化性の樹脂をつくる。

フェノールとアルデヒドとの縮合がまだ十分に進まず,溶媒に溶け,熱によって
柔らかくなる段階で,フェノール樹脂に木粉などを混ぜて練り合わせ,加熱・加圧
して適当な形を与えながら最後の硬化を行ってフェノール樹脂の製品にする。フェ
ノール樹脂は電気絶縁材料・家具・日用品などに用いられている。
酸を触媒としてフェノールとホルムアルデヒドを反応させるときは,第1段階で,
主としてメチレン結合からなる中間体(ノボラック)が生成する。

ノボラックはこのまま加熱しても硬化しないので,ヘキサメチレンテトラアミンな
どの硬化剤を加えて加熱し,フェノール樹脂にする。
フェノールの代わりに,クレゾールやキシレノールなどを原料としたフェノール
樹脂もつくられている。クレゾールを用いた場合は,オルトとパラの場合は2か所
しか反応場所がない。そのためo-クレゾール,p-クレゾールからは鎖状構造の高
分子ができ,硬化性の樹脂を得ることができない。o-クレゾール,p-クレゾール
を用いる場合は,m-クレゾールあるいはフェノールを加えないと硬化しない。

●尿素樹脂 尿素とホルマリンの縮合による熱硬化性樹脂。ユリア樹脂ともい
う。尿素をホルマリンに溶かし,尿素が完全に溶けてからアンモニア水を加え
10〜15分熱し,型に入れさらに60〜80℃,80〜100℃で熟成させてもよい。
この場合,尿素5gに対し35%ホルマリンを15ml程度,濃アンモニア水は,0.5
ml程度加えると透明で硬く強い樹脂ができる。尿素が少ないと白濁し,多いと透
明になるが乾燥しにくく,硬さが充分でない。加熱時は沸騰石を入れ突沸しないよ
うにし,消えにくい泡ができ始めたら素早く型に流し込む。また,熟成に際しても
急激な温度変化は気泡混入の原因になる。この反応では,尿素分子にホルムアルデ
ヒドが付加(メチロール化)し,さらに,メチロール基−CH2OHと他の尿素分子の
−NH−間で脱水縮合(メチレン化)が起こり,しだいに大きな分子となり硬化してい
く。

尿素樹脂は,食器などの成形品や,合板用の接着剤に用いられる。
◆メラミン樹脂
メラミンとホルマリンの縮合による熱硬化性樹脂で,1996年の生産量は約13万
tである。尿素樹脂と同様にして製造され,成形材料ではパルプなどの充てん材を
加える。食卓などの天板,耐熱性食器,建材などに用いられる。

◆シリコーン樹脂
ケイ素樹脂ともいい,有機基をもつケイ素が酸素と交互に結合した結合を骨格に
もった樹脂。シリコーンの原料としてはタロロトリメチルシラン(CH3)3SiCl,ジク
ロロジメチルシラン(CH3)2SiCl2,トリクロロメチルシランCH3SiCl3がある。これ
らの化合物は水と容易に反応しシラノール(CH3)4−nSi(OH) n (n=1,2,3)となり,
このとき発生する塩酸は脱水縮合を促進する。
原料がR3SiClとR2SiCl2では分子量はあまり大きくないシリコーン油が生じ,
R2SiCl2では直線分子のシリコーンゴムが得られ,R2SiCl2とRSiCl3では一部架橋
されたシリコーン樹脂が得られる。シリコーン樹脂は耐熱性,耐水性,電気絶縁性
に優れているので,電気絶縁剤として用いられるほか,塗料用として他の樹脂とと
もに使用されることが多い。

◆イオン交換樹脂
1935年イギリスのAdamsとHolmesが,実験室内の塩水がベークライト系の
合成樹脂のため一夜で酸になったことから,合成樹脂のイオン交換作用を発見した。
しかし,イオン交換作用そのものは,1850年に土壌中にその作用のあることなど
が知られていたが,1944年アメリカのD’Alelioがポリスチレンを母体とするイオ
ン交換樹脂を発明し・研究は急激に発展した。現在実用化されているものは,大部
分スチレンとジビニルベンゼンの共重合体を母体とし,その形状は0.5〜1..0mm
の粒状のものが主であるが,最近は薄紙のようなイオン交換膜も多く使われている。
このように,イオン交換樹脂は有機高分子化合物の1つで,その主なものは
-SO3H:スルホ基,強酸型 -COOH:カルボキシ基,弱酸型
-N(CH3)3OH:第四級アルキルアンモニウム基,強アルカリ型
-NH2,-NHR,-NR2:アミン類,弱アルカリ型
などがある。その交換作用は,酸型(HR)のものはH+と陽イオン,塩基型(ROH)
のものはOH−と陰イオンの間で次のように行われる。
HR+NaCl
NaR+HCl
ROH+NaCl
RCl+NaOH
イオン交換樹脂は純水製造のほか,海水から真水や塩の製造,微量イオンの回収
の応用として原子力産業への利用,廃液中から有効成分の分離精製,医薬品として
など,学術研究と実用の両面で幅広く用いられている。

参考 感光性樹脂 感光性樹脂は光で不溶化するネガ型と,光で可溶化するポジ型が
ある。ネガ型感光樹脂としてはポリビニルシンナマートであり,その橋架け不溶化
する反応を下に示す。

ネガ型感光性樹脂を用いた写真凸版製版法の原理を右に示す。露光により光り露
光部は硬化し,溶剤で現像することにより末露光部が洗い流され,光硬化部が残り,
耐酸化被膜となる。腐食液により金属基盤を削り凸版となる。一方,ポジ型感光樹
脂には,光照射で高分子主鎖が分解するポリメチルメタクリレート誘導体等が使用
されている。

参考 高分子膜
高分子膜の利用法としては,限外炉過膜,逆浸透膜,透析膜,気体分離膜,徐放
性膜,マイクロカプセルなどがある。
限外炉過膜は分子ふるい膜ともよばれ,分子量500から30万までの分子を,分
子の大きさを利用して分離するために用いられる。
逆浸透膜は,Na+やCl−を通さず水分子を通すので,海水からの淡水製造などに
用いられている。
透析膜は,人工腎などに利用され,血液中の不要物を除く働きをする。
気体分離膜は,気体中の特定の物質を回収濃縮するなどの働きをもち,人口肺な
どへの利用が考えられているが,まだ試験段階である。ヘリウムの純化などで一部
実用化されている。
徐放性膜は,一定速度で物質を透過させる働きをするので,薬品や農薬を必要な
とき必要量だけ放出させるために利用される。
マイクロカプセルは,直径数µmから数百µmの大きさに物質を膜で包んだも
のである。膜は,揮発性物質や反応性物質の隔離・保護の役目や,形態の変換(気
体・液体の固形化,溶解度・比重などの改変)の役目を果たしている。
参考 吸水性高分子
吸水性高分子とは,水を数百倍も吸収して膨潤し,ハイドロゲルとなるポリマ
ーである。化学構造上は,カルボキシ基などの親水基をもつ水溶性ポリマーを分
子間で架橋したものである。いったん膨潤したハイドロゲルは,加圧しても水は
出てこない。食物にたとえればコンニャクのようなもので,高野豆腐のように多
孔質で押すと水が出てくるものとは異なる。ハイドロゲルに塩をかけると,水を
出して縮み(塩析現象),膨潤したハイドロゲルからは水を自由に出すことができ
る。また,砂漠地帯の緑化計画にはたす吸水性高分子の役割が注目されている。
この原理を利用したのが,土や砂に添加する植物用保水剤であり,1960年頃アメ
リカで開発された。吸水性高分子は,生理用品や紙おむつなどに利用されている。
そのポリマーのほとんどはポリアクリル酸塩系であり,デンプンとポリアクリル
酸からなるものやメタクリル酸メチルと酢酸ビニルの共重合体などがある。
