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2節 酸化剤と還元剤

 

A 酸化剤と還元剤

酸化剤と還元剤

 酸化作用を有する物質を酸化剤という。一般に相手の物質に酸素を与えるもの,相手の物質から水素を奪うもの,相手の物質から電子を奪うものである。また,還元を起こさせることのできる物質を還元剤という。即ち,相手の物質から酸素を奪うもの,相手の物質に水素を与えるもの,相手の物質に電子を与えるものである。次表に普通用いられる酸化剤と還元剤を分類して示す。

 中間的な酸化数をもつ物質は,場合により酸化剤にも還元剤にもなる。例えば,SO2Sの酸化数は+4だが,Sにはその他に−20,+6等の酸化数を示す物質がある。酸化剤と反応する時は,SO2は還元剤として働き酸化数は+6になる。還元剤と反応する時は,SO2は酸化剤として働き酸化数は0になる(即ち単体が析出する)H2O2Oの酸化数は−1であり,Oには−20の酸化数もあるので,SO2と同様にH2O2も酸化剤と還元剤の両方の働きをする。

酸化剤・還元剤

分   類

19世紀半ば頃までに知られていたもの

比較的新しいもの

単    体

O2O3Cl2Br2I2S

F2やフッ素化試薬

酸 化 物

MnO2PbO2CuOAg2O

 

オキソ酸の塩

硝石,塩素酸塩,次亜塩素酸塩,ヨウ素酸塩,

臭素酸塩,クロム酸塩,過マンガン酸塩,

バナジン酸塩,ビスマス酸塩等

過酸化物

H2O2Na2O2BaO2H2SO5

そ の 他

王水,硝酸,熱濃硫酸,熱濃過塩素酸,

ヘキサシアノ鉄(V)酸塩(フェリシアン化物)

(V)塩,セリウム(W)塩等


単体

H2CP,金属(ZnSn)と酸,NaMg

Al
 

金属アマルガム等

水素化合物

 

HIH2SNH3とその誘導体PH3AsH3

金属水素化物とそ

の誘導体

炭化水素(鉱油)

酸化物

 

COSO2P2O3H3AsO3H2PHO3HNO2

 

H2SO3

その他

(U)塩,スズ(U)塩,硫化物,

低酸化状態のTi

VCr化合物

ヘキシアノ鉄(U)酸塩(フェロシアン化物)

シュウ酸・グルコース等の有機物等

 

B 酸化還元の化学反応式

酸化還元反応式のつくり方

酸化剤Oxは,電子を得て他の物質に変化するが,この反応が可逆である場合に,その逆反応では,生成物が電子を失って元の酸化剤に戻るので,正反応による生成物は還元剤Reとして働く。即ち,

Ox1ne ―→ Re1 (1)

また,還元剤についても,同様に考えると,

Re2 ―→ Ox2me …(2)
 この(1)(2)eの数が等しければ,m×(1)n×(2)より,次式が得られる。
   mOx1nRe2 ―→ mRe1nOx2  (3)
 一般に,酸化還元の反応式はこの様な形になっている。(1)(2)の様な式で関係づけられる一対の物質((1)ではOx 1Re1(2)ではRe2Ox 2)を,酸化還元対または“redox”対という。そして, (1)(2)の半反応式から電子eを消去してそれらを組み合わせると,酸化還元反応を示すイオン反応式が得られる。

例えば,塩素(酸化剤)とヨウ化カリウム(還元剤)の反応は,次式のようになる。

 

Cl22e―→ 2Cl・・・(4)

}

(4)(5)

 

Cl2+2I―→ 2ClI2

2I2e―→ I2・・・(5)

Ox1 Re2    Re1 Ox2

 

 教科書には,酸化剤・還元剤の酸化還元対の半反応式をeを用いて示した。半反応式はO原子でも示すことができ,下表にその働き方を示す。

 

酸化剤・還元剤の働き方

オゾン

O3 ―→ O2(O)

過酸化水素

H2O2 ―→ H2O(O)

過マンガン酸カリウム

2MnO46H―→ 2Mn23H2O5(O)

塩 素

Cl2H2O ―→ 2HCl(O)

二クロム酸カリウム

Cr2O728H―→ 2Cr34H2O3(O)

希硝酸

2HNO3 ―→ 2NOH2O3(O)

濃硝酸

2HNO3 ―→ 2NO2H2O(O)

熱濃硫酸

H2SO4 ―→ SO2H2O(O)

二酸化硫黄

SO2 ―→ S2(O)

ナトリウム

2Na(O) ―→ Na2O

シュウ酸

H2C2O4(O) ―→ 2CO2H2O

水 素

H2(O) ―→ H2O

硫化水素

H2S(O) ―→ SH2O

二酸化硫黄

SO2H2O(O) ―→ H2SO4

酸化鉄(II)

2Fe22H(O) ―→ 2Fe3H2O

塩化スズ(II)

Sn22H(O) ―→ Sn4H2O

過酸化水素

H2O2(O) ―→ H2OO2

 

COD(chemical oxgen demand)

一定条件下で酸化剤を用いて試料水を処理し,化学的に酸化される被酸化物質の量を酵素の消費量として求めたもので,汚染物質の濃度を表す尺度である。

 

C 金属の酸化還元反応

イオン化傾向

金属の単体が水溶液中で電子を放出して陽イオンになる傾向の大小をいう。これを大きいものから順番に並べたものはイオン化列と呼ばれている。イオン化列の順序は定性的に定められたものだが,最近は標準電極電位の測定によって得られた序列,即ち電気化学列とその配列がほぼ一致する事から,電気化学列をイオン化列と区別しないで用いている。

イオン化列の中に水素H2を入れているのは,金属と酸との反応で,水素イオンが電子を受け取って水が生じるかどうかを判定できるからである。

標準電極電位V25℃,105Paで標準水素電極を基準にする。

電位〔V

電位〔V

LieLi

3.045

In33e-In

0.3382

Ke-K

2.925

Tle-Tl

0.3363

Rbe-Rb

2.924

Co22e-Co

0.277

Cse-Cs

2.923

Ni22e-Ni

0.257

Ba22e-Ba

2.92

Sn22e-Sn

0.138

Sr22e-Sr

2.89

Pb22e-Pb

0.126

Ca22e-Ca

2.84

2H2e-H2

0(基準)

NaeNa

2.714

Bi3e-Bi

0.3172

Mg22eMg

2.356

Cu2+2e-Cu

0.340

Be22eBe

1.97

Cue-Cu

0.520

Al33eAl

1.676

Rh33e-Rh

0.758

Mn22eMn

1.18

Hg222e-2Hg()

0.796

Cr22eCr

0.90

Age-Ag

0.799

Zn22eZn

0.763

Pd22e-Pd

0.915

Ga33e-Ga

0.529

Pt22e-Pt

1.188

Fe22e-Fe

0.44

Au33e-Au

1.52

Cd22e-Cd

0.4025

Aue-Au

1.83

 

主な金属のイオン化傾向と金属の反応性

金属と水,酸との反応をみると,イオン化傾向が小さいものでは,酸化性の酸としか反応しないが,イオン化傾向が次第に大きくなるにつれ,希酸,高温水蒸気,水,・・・と反応する範囲が広がってくる。また,乾燥空気との反応も,イオン化傾向が大きい金属程反応し易い。

主な金属のイオン化傾向と反応性

 

王水(aqua regia)

濃硝酸と濃塩酸を容積比13で混合した溶液。溶液中に塩化ニトロシルと塩素を含み,強力な酸化作用によって,硝酸や塩酸に溶けない金や白金を溶かす。長く保存すると劣化するので,使用する度に調製する方がよい。

また,濃硝酸と濃塩酸が容積比31の混酸を逆王水と呼ぶ。

 

 

 

 








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