トップ>Master化学I>第3部 無機物質>第2章 金属元素>第4節 遷移元素とその化合物
第4節 遷移元素とその化合物
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►遷移元素の性質 第4周期の遷移元素の性質を下表に示す。遷移元素の融点が高く硬いのは,d軌道電子を含む多数の電子が金属結合に参加する為と考えられる。 遷移元素は幾つかの酸化数を示すものが多い。これは,結合に関係する電子の全てが常に使われるわけではないからである。例えばマンガンは,最高7個の電子が結合に関与するが,実際には2〜6個が使われる事もあり,+2〜+7の酸化数を示す。 |
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第4周期遷移元素の性質
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元素 |
Ca |
Sc |
Ti |
V |
Cr |
Mn |
Fe |
Co |
Ni |
Cu |
Zn |
|
融点〔℃〕 |
839 |
1541 |
1660 |
1887 |
1860 |
1244 |
1535 |
1495 |
1453 |
1083 |
420 |
|
沸点〔℃〕 |
1484 |
2831 |
3287 |
3377 |
2671 |
1962 |
2750 |
2870 |
2732 |
2567 |
907 |
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密度〔g/cm3〕
|
1.55 |
2.99 |
4.54 |
6.11 |
7.19 |
7.44 |
7.87 |
8.90 |
8.90 |
8.96 |
7.13 |
|
原子半径〔×10-10m〕
|
1.97 |
1.63 |
1.45 |
1.31 |
1.25 |
1.12 |
1.24 |
1.25 |
1.25 |
1.28 |
1.33 |
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M2+半径〔×10-10m〕
|
1.14 |
― |
1.00 |
0.93 |
0.87 |
0.81 |
0.75 |
0.79 |
0.83 |
0.87 |
0.88 |
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結晶構造*
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面立
|
六最
|
六最
|
体立
|
体立
|
立方
|
体立
|
六最
|
面立
|
面立
|
六最 |
|
電気陰性度 |
1.00 |
1.36 |
1.54 |
1.63 |
1.60 |
1.55 |
1.83 |
1.88 |
1.95 |
1.90 |
1.65 |
|
標準電極電位 |
−2.8 |
−2.03 |
−1.63 |
−1.13 |
−0.90 |
−1.18 |
−0.44 |
−0.277 |
−0.257 |
0.340 |
−0.763 |
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主な酸化数 |
2 |
3 |
2〜4 |
2〜5 |
2〜6 |
2〜7 |
2〜4, |
1〜4 |
1〜4 |
1〜3 |
2 |
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*面立は面心立方構造,六最は六方最密構造,体立は体心立方構造 |
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►遷移元素の特色 遷移元素の特色を纏めると,次の様になる。 (1) 周期表の第4周期以後に位置し,3〜11族に属する。 (2) 原子の電子配置は,原子番号の増加に伴い,最外殻ではなく内殻のd軌道, f軌道に電子が満たされていく。 (3) 一般に密度が大きく,Scを除き重金属である。融点・沸点も高く,融解熱も大きい。比較的硬い。 (4) 有色の化合物が多い。 (5) 単体のイオン化傾向は比較的小さく,また反応性も小さい。 (6) 同一元素で,幾つかの酸化数をもつものが多い。 (7) 錯イオンを作る。 ►錯イオン(complex ion) 中心の金属イオンに幾つかの分子またはイオンが配位結合して,1つの原子集団のイオンとなったものを錯イオンという。これらの分子またはイオンを配位子といい,配位子の数を配位数という。錯イオンは水溶液中で,構成イオンや分子に殆ど解離せず,1つのイオンとして働く。 錯イオンを形成する金属イオンは,主として遷移元素のイオンだが,マグネシウムやアルミニウム等も錯イオンを作る。錯イオンの配位数は,金属元素の種類によって異なり,2,4,6等がある。 錯イオンの構造は直線形や正方形,正四面体,正八面体等の形がある。また,配位子はNH3,H2Oの様な分子か,CN-,Cl-等の様な安定なイオンがよく知られている。どれも非共有電子対を持ち,その電子対によって中心金属と配位結合で結び付く。配位子が水分子のときは,この水を特に配位水といい,その水和錯イオンをアクア錯イオンと呼んでいる。例えば,次の様なアクア錯イオンがある。 [Ni(H2O)6]2+,[Co(H2O)6]2+,[Fe(H2O)6]2+,[Cu(H2O)4]2+ したがって,これら金属イオンの水溶液の色は,イオンそのものの色ではなく,水分子が配位された状態のアクア錯イオンの色である。
配位子1個が2箇所以上で金属原子と結合し,金属原子を含む環状構造になるとき,生成化合物をキレート化合物という。エチレンジアミン銅(U)錯塩[Cu{C2H4(NH2)2}2]2+はこれにあたる。
キレート化合物は,金属イオンの分析に利用されるものがある。また,非電解質で水に溶けてもイオンにならないものも存在する。
錯塩,錯イオン,キレート化合物等を総称して錯体と呼ぶ。 参考 ウェルナーの配位説 錯塩の結合は,19世紀末頃迄説明がつかなかったが,1893年Wernerがコバルトアンミンを研究して,解明の糸口を開いた。これをWernerの配位説という。 Wernerによれば,塩化コバルト(III)とアンモニアからなる配位化合物(高次化合物)をコバルトアンミンという。コバルトアンミンには,色の美しい化合物が多くあって,その色によって下表の様に名がつけられていた。 これらのコバルトアンミンの水溶液に硝酸銀溶液を加えると,式中のClの数は同じだが,AgClの沈殿量は異なる。 CoCl3 · 6NH3 からは 3AgClが沈殿 CoCl3 · 5NH3・H2O からは 3AgClが沈殿 CoCl3 · 5NH3 からは 2AgClが沈殿 CoCl3 · 4NH3 からは 1AgClが沈殿 Wernerは,1887年Arrheniusが発表した電離説を採用してAgClとして沈殿するClは,Cl-となっているもので,AgClとして沈殿しないものはCoと結合していると考えた。この考え方を基に,[Co(NH3)6]Cl3,[Co(NH3)5H2O]Cl3,[Co(NH3)5Cl]Cl2,[Co(NH3)4Cl2]Clで表される式を導いた。 Wernerは,この様にして数個の分子や基(イオン)が中心原子と結合する事,即ち配位の考えを明らかにした。
B 鉄 ►鉄(iron) 鉄,コバルト,ニッケルの3元素はよく似ている。単体は強磁性体で,微粉末は水素を吸着する。酸では2価の陽イオンになり,錯イオンを作り易い。鉄は2価,3価とも安定だが,2価のものは3価に移り易い。コバルトとニッケルは,単塩では2価が安定だが,錯塩では3価が安定となる。 鉄の単体は,鉄の塩類を電解するか,または純粋な酸化鉄(III)Fe2O3,シュウ酸鉄(II)FeC2O4を水素気流中で熱すると純鉄が得られる。赤熱した鉄は,水蒸気を分解して水素を生じる。 3Fe+4H2O ―→ Fe3O4+H2 鉄は塩酸,硫酸に溶けるが,濃硝酸には不動態を生じてそれ以上溶けない。この不動態になった鉄片を硫酸銅溶液中に入れてもその表面に銅が析出しない。鉄は乾いた空気には侵されないが,水分と二酸化炭素を含む空気中では速やかに酸化される。 ►鉄の化合物 酸化鉄(III) a 型とg 型があり,aとして天然に赤鉄鉱がある。硝酸塩,シュウ酸塩,水酸化物等を空気中で焼くとa型,四酸化三鉄を穏やかに酸化するとg 型が得られる。色は製法及び処理によって黄赤,赤褐,紫等と変わるが,一般には赤色である。g 型は400〜700℃でa 型に変わる。密度は製法によって少し異なる。 強熱すると分解して酸素を放出する。熱すれば水素,一酸化炭素等で還元される。酸には次第に溶け,鉄(III)塩を生じるが,一度強熱したものは溶け難い。 この化合物はべんがらとも呼ばれ,研磨剤,赤色顔料,鉄製造原料になる。 硫酸鉄(II) 7分子の水和水をもち,緑バンともいわれる。空気中に長く放置すると風解し,また酸化されて黄褐色になる。熱すれば,90℃で6分子,300℃で全部の水和水を失い,白色の無水物になる。水溶液はほぼ中性だが,空気で酸化されて塩基性硫酸鉄(III)の黄褐色沈殿を生ずる。実験室で使う鉄(II)塩で,還元剤等の代表例である。 塩化鉄(III) 黄褐色の潮解性結晶である。融点300℃または306℃だが,315℃で分解する。Fe3+は水溶液中では[Fe(H2O)6]3+だが,FeCl3を沸騰水に溶かすと赤褐色の溶液を生じる。これは加水分解によって水酸化鉄(III)のコロイドができる為である。 |
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鉄の化合物 |
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化学式 |
色 |
融 点 〔℃〕 |
水溶性 |
備 考 |
FeO
|
黒 |
1370 |
不 |
発火性,水を分解 |
|
Fe2O3 |
赤褐〜黒 |
1565 |
不 |
赤鉄鉱 |
|
Fe3O4 |
黒 |
1538 |
不 |
磁鉄鉱(マグネタイト) |
|
Fe(OH)2 |
無〜淡緑 |
分解 |
不 |
空気中で酸化 |
|
FeO(OH) |
赤,褐 |
脱水136 |
不 |
針鉄鉱,鱗鉄鉱 |
|
FeSO4 · 7H2O |
青緑 |
64 |
溶 |
[Fe(H2O)6]SO4 ·H2O |
|
FeCl3 · 6H2O |
黄褐 |
36.5 |
溶 |
潮解性 |
|
Fe(NO3)3 · 9H2O |
無〜淡紫 |
47.2 |
溶 |
潮解性 |
|
|
黒褐 |
1193 |
不 |
六方晶系結晶 |
|
FeK (SO4)2 |
無 |
33 |
溶 |
鉄ミョウバン |
|
K4[Fe(CN)6] · 3H20 |
黄 |
脱水100 |
溶 |
黄血塩 |
|
K3[Fe(CN)6] |
赤 |
分解 |
溶 |
赤血塩 |
|
FeK[Fe(CN)6] · nH2O |
濃青 |
分解 |
溶 |
立方晶系結晶 |
|
K4[Fe(SCN)6] · 4H2O |
無 |
分解 |
溶 |
空気中で酸化 |
|
K3[Fe(SCN)6] · 4H2O |
深赤 |
分解 |
溶 |
潮解性 |
|
►鉄イオンの反応 FeSO4 · 7H2Oの水溶液は,[Fe(H2O)6]2+が存在するので淡緑色だが,Fe2+は酸化され易く,次第に黄色くなる。 4Fe2++O2+2H2O ―→ 4Fe3++4OH− 塩基性にすると,Fe(OH)2の白色沈殿が生じる。これも酸化されて緑色を帯び易い。K3[Fe(CN)6]水溶液を加えるとターンブル青という濃青色沈殿が得られる。K4[Fe(CN)6] 水溶液を加えると白色沈殿ができる。この沈殿も酸化され易く,実際には青色を帯びる。この様なFe2+の酸化を防ぐには,溶液に亜ジチオン酸ナトリウム(ハイドロサルファイト)Na2S2O4を少量加えておくとよい。 Fe3+の水溶液は,[Fe(H2O)6]3+を含み淡紫色を示す。しかし,OH−やCl−が配位すると黄色味を帯びる。塩基性にするとFe(OH)3の赤褐色沈殿が生じる。 Fe3++3OH−―→ Fe(OH)3 チオシアン酸カリウムKSCN水溶液を加えると,血赤色溶液となる。 [Fe(H2O)6]3++nSCN- ―→[Fe(SCN)n(H2O)6−n] 3−n+nH2O K4[Fe(CN)6]溶液を加えると,プルシアンブルー(ベルリン青)とよばれる濃青色沈殿を生じる。また,K3[Fe(CN)6]溶液を加えると褐色溶液となる。 C 銅 ►銅(copper) 銅,銀,金の3元素を銅族元素という。どれも最外殻のs電子1個を失って1価の陽イオンになる。しかし内部のd電子を失う事もあり,銅はCu2+,金はAu3+になり易く,むしろこの方が安定である。どれも錯イオンを作り易く,[Cu(NH3)4]2+,[Ag(CN)2]-,[AuCl4]-等の例がある。銅(U)イオンは,水溶液中で[Cu(H2O)4]2+のアクア錯イオンとなっている。銅(U)イオンの示す青色は,アクア錯イオンが示す色であり,水を失うと無色になる。 銅の単体は,展性・延性が大きく,熱や電気の良導体である。酸には溶け難いが,希硝酸,濃硝酸,熱濃硫酸等の酸化作用のある酸にはよく溶ける。これらの反応は,銅がまず酸化されて酸化銅(U)CuOとなり,次いで酸化銅(U)に酸が作用すると考えると理解し易い。 Cu+(O) ―→ CuO CuO+2H+―→ Cu2++H2O 銅は,合金として利用される事も多い。 銅の合金と成分(%)
►銅の電解精錬 粗銅はヤ金銅ともいい,純度が悪く,不純物を除く為に電解精錬を行う。粗銅を陽極とし,純銅薄板を陰極として硫酸銅の溶液中で電解する。 電解で純銅が得られるのは,銅と不純物の金属とのイオン化傾向の差を利用したものである。銅とそれより大きいイオン化傾向の金属は液に溶け出すが,小さい金属(Au,Ag)は溶けずに陽極下に沈殿する(陽極泥)。液中に溶け出た金属は,イオンのまま溶液中にあるが(硫酸塩の溶解度が小さいイオンはPbSO4の様に沈殿する),銅のみは陰極に析出する。これが電気銅(純度99.99%以上)である。 陽極泥は焼いて,金を含む粗銀とする。これを陽極として,陰極に純銀かステンレス鋼を用いて電解する。このときの電解液は,硝酸酸性硝酸銀溶液を用いる。この様にして純度99.95%以上の純銀を得る。このときできる陽極泥を焼いて粗金を得,更にこれより純金を得る。
►銅の化合物 硫酸銅(U)五水和物CuSO4・5H2O(または[Cu(H2O)4]SO4・H2O)は青色結晶で,熱すると水和水が段階的に失われる。 |
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この無水物は白色粉末で,吸湿性が強く,水分を吸収して青色の水和物になる。その為,無水物は微量の水の検出や脱水剤に利用される。水溶液は収れん性と殺菌作用がある。農薬(ボルドー液等),銅めっき,媒染剤,銅アンモニアレーヨンの原料,皮なめし等に用いられる。 |
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銅の化合物の性質 |
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化 学 式 |
色 |
融点〔℃〕 |
水溶性 |
備 考 |
|
Cu2O |
赤 |
1235 |
不 |
赤銅鉱.NH3水,塩酸に溶解
|
|
CuO |
黒 |
1236 |
不 |
酸に溶解 |
|
Cu(OH)2 |
青 |
分解(CuO) |
不 |
酸,NH3水,KCN水に溶解 |
|
CuS |
黒 |
分解220 |
不 |
コベリン.KCN水に溶解 |
|
CuSO4 ·5H2O |
青 |
分解脱水 |
溶 |
潮解性,カルカンサイト |
|
CuCl2 ·2H2O |
緑 |
分解脱水 |
溶 |
潮解性,高温でCuCl生成
|
|
Cu(NO3)2 ·3H2O |
青 |
114.5 |
溶 |
170℃でHNO3生成 |
|
CuCN |
無 |
窒素中473 |
不 |
塩酸,KCN水,NH3水に溶解 |
|
Cu2CO3 |
黄 |
分解 |
不 |
酸,NH3水に溶解 |
|
[Cu(NH3)4]SO4 ·H2O |
青紫 |
分解150 |
溶 |
エタノールに不溶 |
|
K3[Cu(CN)4] |
無 |
400→分解 |
溶 |
吸湿性 |
|
►銅イオンの反応 塩基性にすると,青〜青白色の水酸化物Cu(OH)2が沈殿する。このとき,長く放置するか熱すると黒色の酸化銅CuOを生じる。 Cu2++2OH- ―→ Cu(OH)2, Cu(OH)2 ―→ CuO+H2O また,アンモニア水を過剰に加えた時は,Cu(OH)2が溶けて深青色溶液となる。これはアンミン錯イオンが生じる為である。 Cu(OH)2+4NH3 ―→[Cu(NH3)4]2++2OH- 硫化水素水H2Sを加えると,黒色のCuSを沈殿する。CuSは酸に溶け難いが,熱希硝酸やKCN水溶液には溶ける。 2CuS+9CN- ―→ 2[Cu(CN)4]3-+CNS-+S2- Cu2+水溶液にKCN水溶液を加えると黄色のCu(CN)2が沈殿するが,これは直ちに(CN)2ガスを失って白色のCuCNの沈殿になる。このCuCNは,過剰のKCNと錯イオンを作って無色の溶液となる。 Cu2++2CN- ―→ Cu(CN)2 2Cu(CN)2 ―→ 2CuCN+(CN)2 CuCN+3CN- ―→[Cu(CN)4]3- 中性のCu2+溶液は,K4[Fe(CN)6]溶液を加えると赤褐色沈殿となる。 2Cu2++[Fe(CN)6]4- ―→ Cu2[Fe(CN)6] ►シュバイツァー試薬とキュプラ 1857年,シュバイツァーによりキュプラ(銅アンモニアレーヨン)が作り出され,1919年,ベンベルグ社によってキュプラが工業化された。銅(U)イオンのアンミン錯体[Cu(NH3)4](OH)2の溶液をシュバイツァー試薬という。熱した硫酸銅(U)水溶液に炭酸ナトリウム水溶液を加えて生じる沈殿CuSO4 · 3Cu(OH)2を集め,メチルレッドが黄変する迄アンモニア水に溶かし,水酸化ナトリウム水溶液を加えて作る。深紫青色。セルロースを溶かす性質がある。実用的には安定剤としてグルコースを加える事がある。 この液に木綿リンターまたは高a木材パルプ等の原料セルロースを溶かし,更に水酸化ナトリウム溶液を加えてセルロースを完全に溶かす。この紡糸原液を凝固浴の水中に繊維状に押し出し,更に30℃の希硫酸浴中に通し,脱銅再生してキュプラとする。 D 銀 ►銀(silver) 天然に遊離銀として存在する事もあるが,多くは輝銀鉱Ag2S,輝安銅銀鉱(主成分CuS・Ag2S)等として産出する。金属の中で最も熱や電気を伝え易く,展性・延性も大きい。化学的に安定で,空気中では酸化され難い。酸化力のある濃硝酸や熱濃硫酸には溶ける。 Ag+2HNO3 ―→ AgNO3+H2O+NO2 2Ag+2H2SO4 ―→
Ag2SO4+2H2O+SO2 硫化水素H2Sと反応すると,Ag2Sを生じて黒化する。 銀は貴金属であり,装身具や銀器に用いられる他,金との合金等にも用いられる。また化合物として,写真感光剤に利用される。 ►銀の化合物 ハロゲン化銀の溶解性の差異は,アンモニア水によってよく現れる。溶解性はAgCl>AgBr>AgIであり,AgClはよく溶けるが,AgIは殆ど溶けない。 |
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銀の化合物 |
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化 学 式 |
色 |
融点〔℃〕 |
水溶性 |
備 考 |
|
Ag20 |
暗褐 |
分解200 |
不 |
硝酸,NH3水に溶 |
|
AgCl |
無 |
455 |
不 |
光で黒化.NH3水,KCN水に溶 |
|
AgBr |
淡黄 |
432 |
不 |
光で黒化.NH3水,KCN水に溶 |
|
AgI |
黄 |
552 |
不 |
光で黒化.KCN水,Na2S2O3水,NH3水に溶 |
|
Ag2S |
黒 |
825 |
不 |
硝酸,硫酸,KCN水に溶 |
|
Ag2SO4 |
無 |
652 |
難 |
酸,NH3水に溶 |
|
AgNO3 |
無 |
212 |
溶 |
エタノールに溶.アセトンに難熔 |
|
Ag2CrO4 |
暗赤 |
− |
不 |
NH3水,KCN水に溶
|
|
Ag2Cr2O7 |
赤 |
分解 |
不 |
酸,NH3水,KCN水に溶 |
|
[Ag(NH3)2]2SO4 |
無 |
− |
溶 |
正方晶系 |
|
K[Ag(CN)2] |
無 |
− |
溶 |
立方晶系,エタノールに溶 |
|
►銀イオンAg+の反応 硝酸銀水溶液中のAg+は,塩基にはAg2Oとなって沈殿する。 2Ag++20H- ―→
Ag2O+H2O この沈殿は,アンモニア水に溶ける。 ハロゲン化物イオンとの反応は,前項目の解説の様になる。 硫化水素には,Ag2Sとなって沈殿する。Ag2Sは,KCN溶液に溶ける。 2Ag++S2- ―→ Ag2S Ag2S+4KCN ―→ 2[Ag(CN)2]-+4K++S2- KCN溶液には,白色のAgCNとなって沈殿するが,過剰のKCN溶液には溶ける。 Ag++CN- ―→ AgCN AgCN+CN- ―→[Ag(CN)2]- K2CrO4またはK2Cr2O7水溶液には,Ag2CrO4となって沈殿する。 2Ag++CrO42- ―→ Ag2CrO4 この沈殿も,KCN溶液やNH3水に溶ける。 4Ag++Cr2O72-+H2O ―→ 2Ag2CrO4+2H+ E その他の遷移元素 ►クロムの化合物と反応 クロムは銀白色金属で,酸化性の酸には不動態となる。希酸には溶けて青色のCr2+となるが,Cr2+は空気中で酸化され易くCr3+になる。クロムは不動態を作り易いので,めっきに用いられる他,合金として用いられる。クロム鋼,ステンレス鋼,ニクロム等がよく知られている。 クロムは主に酸化数+2,+3,+6の化合物を作る。代表的なものにクロム酸カリウムK2CrO4や二クロム酸カリウムK2Cr2O7があり,これらの6価化合物は有毒である。K2CrO4の黄色水溶液に酸を加えるとK2Cr2O7が生じて橙赤色になり,逆にK2Cr2O7の溶液に塩基を加えるとK2CrO4を生じて色が変わる。 2CrO42-(黄)+2H+―→ Cr2O72-(橙赤)+H2O Cr2O72-(橙赤)+2OH- ―→ 2CrO42-(黄)+H2O K2Cr2O7の酸性水溶液は強い酸化剤である。 Cr2O72-+14H++6e- ―→ 2Cr3++7H2O (Cr2O72-+8H+―→ 2Cr3++4H2O+3(O)) カリウムクロムミョウバン(クロムミョウバン)CrK(SO4)2・12H2Oは紫色の結晶で,アルミニウムミョウバンと同じ構造の複塩であり,[Cr(H2O)6]3+を含んでいる。その水溶液は加水分解して酸性を示す。 [Cr(H2O)6]3+ [Cr(H2O)5(OH)]2++H+ CrO42-またはCr2O72-を含む水溶液にAg+,Pb2+,Ba2+を含む水溶液を加えると,それぞれクロム酸塩が沈殿してくる。 Cr3+の水溶液にアンモニア水を加えると,Cr(OH)3 · nH2Oの灰緑色ゲル状沈殿が生じる。これは過剰のNH3水に少し溶ける。 Cr3++3OH- ―→ Cr(OH)3 Cr(OH)3+6NH3 ―→[Cr(NH3)6]3++3OH- Cr3+はNaOH水溶液でも水酸化物の沈殿を生じるが,その過剰に溶ける。 Cr(OH)3+OH- ―→[Cr(OH)4]- |
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クロムの化合物 |
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化 学 式 |
色 |
融点〔℃〕 |
不溶性 |
備 考 |
|
Cr2O3 |
緑 |
2300 |
不 |
酸,塩基,エタノールに不溶。硬度大。 |
|
CrO3 |
赤 |
196 |
溶,潮解 |
硫酸,アルコール,エーテルに溶。強酸化剤。毒性。 |
|
Cr(OH)3 · nH2O |
灰緑 |
分解 |
不 |
酸,塩基に溶。Cr2O3 · nH2O |
|
CrCl3 |
紫 |
1150 |
不 |
メタノール,エタノール,アセトン,エーテルに不溶。 |
|
Cr2(SO4)3
·
18H2O |
青紫 |
分解 |
溶 |
酸に溶。エタノールに不溶。 |
|
Cr(NO3)3
·
9H2O |
紫 |
66.5 |
溶 |
100℃で分解。エタノール,アセトンに溶。 |
|
[Cr(H2O)6]Cl3 |
紫 |
95 |
溶 |
エタノールに溶。CrCl3 · 6H2O |
|
K2CrO4 |
黄 |
975または968.3 |
溶 |
エタノールに不溶。 |
|
PbCrO4 |
黄 |
844 |
不 |
酸,塩基に溶。酢酸に不溶。 |
|
BaCrO4 |
黄 |
— |
不 |
鉱酸(無機酸)に溶。 |
|
K2Cr2O7 |
赤 |
398 |
溶 |
500℃で分解。 |
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►マンガンの化合物と反応 マンガンは銀白色の硬くてもろい金属である。酸に溶けてMn2+になる。水とも徐々に反応し,塩基とも反応する。 マンガンは+2,+4,+7の酸化数の化合物を主に作る。代表的な化合物に過マンガン酸カリウムKMnO4がある。KMnO4はMnO2,K2CO3,KNO3の混合物を溶融して緑色のK2MnO4を作り,これに水か酸を加えて作られる。KNO3は酸化剤であり,水との反応では不均化反応が起きる。 MnO2+K2CO3+(O)
―→ K2MnO4+CO2 3K2MnO4+2H2O ―→ MnO2+2KMnO4+4KOH KMnO4は強い酸化剤だが,液性によって酸化力が変わる。例えば,シュウ酸アンモニウムを酸化するとき,硫酸を加えておけば無色,水酸化カリウムを加えておけば緑色となり,中性では褐色沈殿を生じる。 酸性 MnO4-+8H |