ホーム>新編化学I>第4部 有機化合物>第2章 酸素を含む脂肪族化合物>B アルデヒドとケトン
B アルデヒドとケトン
►アルデヒドとケトン
カルボニル基>C=Oに,水素原子と炭化水素基が結合したものをアルデヒドと
総称し,2個の炭化水素基が結合したものをケトンと総称する。したがって,
-CHOをアルデヒド基(ホルミル基),>C=Oをケトン基ともいう。炭化水素基が
脂肪族のときはそれぞれ脂肪族アルデヒド,脂肪族ケトンといい,芳香族のときは
それぞれ芳香族アルデヒド,芳香族ケトンという。
カルボニル基>C=Oには,>C+-O-の共鳴構造が考えられ,
のよ
うに分極していると考えられる。したがって,求核試薬とは炭素原子が反応し,求
電子試薬とは酸素原子が反応すると考えられる。

水素による還元では,アルデヒドは第一級アルコールに,ケトンは第二級アルコ
ールになる。
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アルデヒド基は容易に酸化されやすく還元剤になる(銀鏡反応やフェーリング液
の反応)が,ケトン基は還元性を示さない。
RCHO+(O) →RCOOH
アルデヒドはシッフの試薬で赤紫色の呈色を示すが,ケトンは呈色反応を示さな
い。
アルデヒド
►アルデヒドの性質
天然には植物精油中にC8H17CHO,C9H19CHOなどの高級アルデヒドとして存在
する。また芳香族アルデヒドも,ベンズアルデヒドやサリチルアルデヒド,バニリ
ンC6H3(CHO)(OCH3)(OH)などが植物精油中に存在する。
低級アルデヒドは,水溶性で刺激臭をもつが,C6〜C9のアルデヒドは芳香のあ
る気体で香料に用いられる。芳香族アルデヒドには芳香のあるものが多い。
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アルデヒドの性質 |
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名 称 |
示 性 式 |
融点[℃] |
沸点[℃] |
比重 |
水溶性 |
|
ホルムアルデヒド |
HCHO |
−92 |
−19.3 |
0.82 |
溶 |
|
アセトアルデヒド |
CH3CHO |
−123.5 |
20.2 |
0.80 |
溶 |
|
プロピオンアルデヒド |
CH3CH2CHO |
−80.05 |
47.93 |
0.80 |
溶 |
|
ブチルアルデヒド |
CH3(CH2)2CHO |
−99 |
74.7〜74.9 |
0.82 |
可 |
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グリオキサール |
CHO-CHO |
15 |
51(1035hpa) |
1.14 |
溶 |
|
ベンズアルデヒド |
C6H5CHO |
−26 |
178 |
1.05 |
微 |
|
サリチルアルデヒド |
o-C6H5(OH)CHO |
0.9〜1.0 |
195 |
1.17 |
可 |
►銀鏡反応
還元性有機物の検出反応の1つ。試料を清浄なガラス器に取り,これにアンモ
ニア性硝酸銀溶液を加えて温めると,Ag+が還元されてAgとなり,これがガラス
器壁に付着して鏡のようになるので銀鏡反応といわれる。ジュワー瓶や鏡の製造
はこの反応に基づいている。
R−CHO+2[Ag(NH3)2]OH→2Ag+RCOONH4+H2O+3NH3
尚,アンモニア性硝酸銀溶液や,酸化銀を濃アンモニア水に溶かした溶液,銀
鏡反応させた溶液などを長時間放置しておくと,雷銀(窒化銀,一窒化三銀)Ag3N
や銀アミドAgNH2,雷酸銀AgOCNなどの爆発性物質が生じる場合がある。これら
の化合物はすべて不安定であり,少しの摩擦や軽い衝撃,接触でも激しく爆発す
るので,アンモニア性硝酸銀溶液は,銀鏡反応の実験を行う毎に調製する必要が
あり,保存しない。
また,銀鏡反応の実験後の溶液は速やかに回収し,塩化ナトリウムNaCl水溶
液(食塩水)や塩酸HCl,硝酸HNO3などを加え,塩化銀AgClとして沈殿させるか,
溶液を中性〜酸性雰囲気にしておく必要がある。
その後,一般的には銀廃液だめの沈殿物をろ過し,ろ液は重金属類を含まない
事を確認後,中和して排出し,集めた沈殿物は廃棄物業者に処理してもらう。銀
イオンの水溶液は,銀イオンの濃度を1 ppm以下にすれば,そのまま下水
として流して捨ててもよい。
►フェーリング液
糖の検出・定量に広く用いられる試薬で,1848年,ドイツの科学者H.Fehling
(1812〜1885年)により考案された。通常はA液(CuSO4溶液)とB液
(KNaC2H2(OH)2(COO)2とNaOHの溶液)に分けて保存され,使用直前に混ぜて使われ
る。
フェーリング液は深青色で,これに糖を加えて煮沸すると,Cu2+が還元されて
Cu2Oの赤色沈殿が生じる。反応は化学量論的ではないが,ヘキソース1分子は銅
の約5原子を還元する。
R-CHO+2Cu2++5OH−→R-COO−+Cu2O+3H2O
尚,ベンズアルデヒドは,強塩基性のときカニッツァーロCannizzaro反応
によりアルコールとカルボン酸になりやすく,フェーリング液とは反応し
にくい。
2R-CHO+NaOH→R-CH2OH+R-COONa
►ホルムアルデヒド
メタナール,メチルアルデヒドともいう。有機物の不完全燃焼で生じ,煙や炎中
に含まれ,大気中にも微量存在する。実験室では,メタノール蒸気の酸化や,塩化
メチレンの加水分解で得られる。融点−92℃,沸点−19.3℃の刺激性の気体で,
還元力が強く,酸化されるとギ酸になる。
HCHO+(O)→HCOOH
フェノール樹脂や尿素樹脂などの原料や,消毒剤や防腐剤などの医薬品に,ホル
マリンとして用いられる。
ホルムアルデヒドの37%水溶液をホルマリンという。重合を避けるため,ま
たホルムアルデヒドの溶解性を高めるため10〜15%のメタノールが含まれている。
最近では60%のものもつくられている。
►アセトアルデヒド
エタナール,エチルアルデヒドともいう。工業的には,以前はHgSO4を触媒に
してアセチレンと水の付加反応で合成されていたが,現在ではエチレンを直接酸化
して合成している。
C2H4+PdCl2(触媒)+H2O→CH3CHO+Pd+2HCl
2CuCl2+Pd→Cu2Cl2+PdCl2
2Cu2Cl2+4HCl+O2→4CuCl2+2H2O
(全体)2C2H4+O2→2CH3CHO (温度100〜110℃)
実験室では,エタノールの酸化により得られる。
C2H5OH+(O)
→CH3CHO+H2O
融点−123.5℃,沸点20.2℃,密度0.80g/cm3の揮発性の無色液体で,水やエタノ
ール,ジエチルエーテルと任意の割合に溶ける。還元性を示す。酢酸及びその誘
導体の原料や,防腐剤,カビ止め剤,写真現像用,溶剤,還元剤などに用いられる。
ケトン
►ケトン
低位の脂肪族ケトンは特有の臭いをもつ液体で,水,アルコール,エーテルなど
に溶ける。炭素原子数が増加すると水に溶けにくくなり,固体となる。
酸化剤に対して安定であるが,硝酸などで強く酸化するとカルボン酸になる。
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ケトンの性質 |
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名 称 |
示 性 式 |
融点[℃] |
沸点[℃] |
比重 |
水溶性 |
|
アセトン |
CH3COCH3
|
−94.82 |
56.3 |
0.7908 |
∞ |
|
エチルメチルケトン(2-ブタノン) |
CH3COC2H5 |
−87.3 |
79.53 |
0.81 |
溶 |
|
メチルプロピルケトン(2-ペンタノン) |
CH3COC3H7 |
−77.75 |
101.92〜101.94 |
0.89 |
可 |
|
ジエチルケトン (3-ペンタノン) |
C2H5COC2H5 |
−39.8 |
101.70 |
0.81 |
可 |
|
シクロヘキサノン |
(CH2)5CO |
−32 |
156 |
0.95 |
8% |
|
アセトフェノン |
C6H5COCH3
|
19.65 |
202 |
1.03 |
微 |
|
ベンゾフェノン |
C6H5COC6H5 |
48〜48.5 |
305.9 |
1.10 |
不 |
RCOCH2R′+3(O)→RCOOH+R′COOH
メチルケトンRCOCH3は,ヨードホルム反応を示し,酸化される。
RCOCH3+4NaOH+3I2→RCOONa+CHI3+3NaI+3H2O
カルボニル基の隣の水素原子は活性で,ハロゲンなどで置換される。
RCOCH2R′+Br