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第1節 堆積岩とその形成場

 

 

岩石の風化

河川のはたらき

堆積岩とその分類

河川と氷河の地形

 

 

岩石の風化

[風化作用]  風化作用には,大きく分けて2種類ある。(1)物理的または機械的風化作用と,(2)化学的風化作用である。(1)は岩石が温度の変化や霜の作用,生物の作用などで細かく壊される作用であり,(2)は空気中の水分・酸素・炭酸ガス,土壌中の水,生物の作用やその分解物などによって岩石中の鉱物が変質・分解して岩石が細かく壊される作用である。しかし,これらの作用は独立にはたらくのではなく,いくつかの作用が複雑にからみ合っている。たとえば寒冷な高山の露岩地域では,岩石の割れ目にしみ込んだ水の凍結によって岩石が粉砕されるが,化学的な風化作用も同時に進行しており,表面からしだいに中のほうへと,玉ねぎ状になった風化がよく見られる。似たような現象は,砂漠においても見られる。日中高温になって膨らんだ岩石の表面に雨が降ると急に冷却されて縮み,細かい割れ目ができる。この割れ目に雨水がしみ込み,化学的風化作用が促進される。化学的風化作用が顕著に見られるのは石灰岩地帯である。これは石灰岩と雨水(pH47)が反応するためである。

 

[土 壌]  土壌は,生物の活動と密接に関係した物理的および化学的風化作用の活発に行われている場所である。土壌の性質は,その下の地質はもちろんのこと,気候や地形,土壌自身の年齢,人間による耕作状態によっても変化する。たとえばヨーロッパの穀倉地帯の土壌を形成しているチェルノジョウム土(ステップ黒土)は,花こう岩・玄武岩・レス・礫岩などの岩石の上にできている。一方,花こう岩だけがもとになっている土壌でも,ステップ地帯では黒色のチェルノジョウム土が,温帯地域では灰色の土,ポドゾルが,また多湿な熱帯地帯では赤色の土,ラテライトが形成される。深く耕されたところでは土壌の断面は均質であるが,自然の状態では普通次のような層状を示している。A1層;腐植に富み暗色な層。A2層:溶脱され漂白された層。A3層;腐植をある程度含み粗い層。B層;含水酸化鉄により赤褐色の色が鮮明な層。C層;土壌の母材の層。

 

河川のはたらき

[下方侵食と側方侵食] 流水が谷底を削り,流路を掘り下げる作用を下方侵食(下刻作用),谷を横に広げようとする作用を側方侵食という。河川による下方侵食は原則として海面以下には及ばない。また海面との高さの差が大きいほど下方侵食はすみやかに進行する。流水の侵食作用は,流水が山から位置のエネルギーを失って海面に達するまでの仕事であるためである。それで海面を侵食の基準面という。川が湖に流れ込んでいるときには湖面が侵食の基準面となる。また,流路の途中に凹凸があったり,かたい岩盤があったりすると,その部分が一時的な基準面となる。急流の河川にしばしば防災用のダムをつくり,侵食の進行や土砂の流出を防ぐのは,流路の中間に水をためて,それから上流の基準面を上げ,侵食の進行をやわらげることにほかならない。

 

[粒子の沈降速度] 一般に,静止している水中に小さな粒子が浮いているとき,その粒子の沈降する速度は,粒子の大きさ・形・密度,粒子を浮かべている液体(水)の密度・粘性に関係する。粒子の密度がほぼ同じと考えてさしつかえないような小さな粒子についてみると,粒子の直径がほぼ0.2mmより小さいときは,その沈降速度υは直径dの2乗に比例する。すなわち,

  υ∝d2 または υ=kd2

kは粒子の密度・形,液体の密度・粘性,および重力加速度によって決まる比例定数で,これをストークス(G.G.Stokes)の法則という。

水中における粒子の沈降速度についての計算値と実験の結果の比較

 

 粒子の直径がほぼ1mmより大きいときには,沈降速度は直径dの平方根に比例する。すなわち,υ∝またはυ=kk′はkと同じく比例定数)で,これはニュートンの落体の法則である。図はストークスの法則および落体の法則を図上に曲線で示したもので,これに実験による粒子の沈降速度が太線で加えてある。この図でわかるように,d0.2mmのときの実験データは,υ∝d2の曲線と一致し,d>1mmのときの実験データは,υ∝の曲線と一致している。この中間の部分(0.2mmd<1mm)では,υ∝dに近い形をとる。この図は,シルトや粘土のような微細な粒子の沈降速度は,液体の粘性に強く左右されるが,砂粒のようなやや粗い粒子の沈降速度は,液体の粘性に左右されないということを意味している。

 粒子を大きさによって分けるには標準ふるいを用いるが,これによってシルトと粘土とは区別することができない。しかし,ふるいを通過したシルトと粘土との混合物は,水中に入れて沈降速度の違いを利用して分けることができる。

 

堆積岩とその分類

[積成作用] 堆積岩を形成する作用,すなわち,風化・侵食・運搬・堆積(沈積,deposition)および続成を,一括して積成作用(sedimentation)という。この積成作用をしばしば堆積作用ともよぶが,これは deposition と混同されるので,一括した名称を堆積作用とよぶのはあまり好ましくない。sedimentation sedimentaryrocks(堆積岩または積成岩)のできるまでの過程全部の総合であって,depositionはその一部にすぎない。積成作用の順序からいえば,侵食・運搬・堆積であるが,侵食は運搬の始まりであり,堆積は運搬の終わりであるということもできる。

 

[続成作用] やわらかい堆積物がかたい岩石になっていく作用が続成作用である。たまったばかりの砂や粘土の粒子の間にはすきまが多く,全体の容積の 5080%はすきまで占められている。このすきまの程度を表すものを孔隙率という。

   孔隙率=100×{(全容積−粒子の容積)÷全容積}

普通の砂では,孔隙率が4050ぐらいで,自重とその上に重なる岩石の重さのためにそれだけすきまの容積が減っていくわけである。また続成作用には粒子の間を通る地下水に溶けていた水酸化鉄・炭酸カルシウム・ケイ酸などが粒子間を埋める(セメントする)作用も含まれる。

 

 [堆積岩] 堆積岩は積成岩ともいい,また沈積岩・水成岩などともいわれている。主として機械的な運搬・堆積作用によってできた堆積岩を砕せつ岩という。砕せつ岩の岩片の大きさの詳細は図Tのようである。岩片の粒子の大きさによる分類にはいろいろあるが,図Tは最も普通に使われているものである。256641/256のような半ぱな直径が境にされているが,これは堆積物の粒度分布が対数正規分布をするからである。図では1目盛りごとに2倍または1/2になっている。

 

図T 粒子の大きさによる岩片の分類

 

砂の粒子を主とするかたまりを砂,粘土の粒子を主とするかたまりを粘土というように,これらの名称は粒子の集まりの名称としても一般に使われている。また,粘土・シルトの混合物のことを,泥とよぶことがある。

 泥(シルトおよび粘土)の固まった岩石を広く泥岩とよぶが,特に塊状のものだけを泥岩とよび,薄くはげるように小細片に割れやすいものを頁岩として区別することが多い。化学的堆積岩は溶液から沈殿してできたもので,細かい結晶でできていることもあり,また非結晶質のこともある。泥岩が軽い変成作用を受けると,剥離面をもつ粘板岩となる。粘板岩の剥離面は頁岩の場合と異なり,層理面と平行でないことが多い。

 砂や砂岩をルーペで拡大して見ると,いろいろな鉱物や,岩石の粒子の存在することがわかる。最も多く目につくのは石英の粒子である。このことは,石英が風化・侵食・運搬の過程を通して,最も強く,破壊されにくいことを意味している。

 

[海底の堆積物] 海底の堆積物(底質ともいう)は,海岸から礫・砂・粘土と順次に細粒になっていくのではない。陸地に近い浅い海底では,このように規則だって配列されず,図Uに見るように,堆積物の分布は不規則で変化に富む(図の200mの等深線より浅い部分に注意)。流れの速いところや海底の突起部では岩盤が露出し,堆積物を欠いている。瀬戸内海の瀬戸のような潮流の速いところでは,ほとんど岩盤が裸になっている(このようなところは海底侵食の行われているところである)。図Uは海上保安庁水路部から発行された駿河湾の底質図を簡略化したものであり,ほぼ200mより深いところでは,細砂・シルト・粘土の混合物()が大部分を占め,単調になっていることがわかる。陸から遠い大洋底の堆積物は,軟泥と赤粘土が主である。軟泥はプランクトンの遺がいが堆積したもので,浮遊性有孔虫のグロビゲリナを主とするグロビゲリナ軟泥,ケイ藻を主とするケイ藻軟泥,放散虫を主とする放散虫軟泥が主なものである。赤粘土は微細な鉱物粒からできたもので,細粒の火山放出物,あるいは宇宙塵のような地球外から飛来した物質などが,長い間に堆積したものとされている。

図U 駿河湾の深さと海底堆積物の分布

 

 台風や地震,地すべりなどがきっかけとなり,浅海に堆積した堆積物が海水と混じって密度の大きい流れとなって海底の斜面を流れ下り,深い海まで達することがある。これは乱泥流とよばれ,地層のなかにはこのようにしてつくられたものが意外に多い。このような地層では,層面に流れの跡などを示す底痕とよばれるものがよく見られる。乱泥流によってつくられた堆積物をタービダイトという。

 また,河川水の中には CaCO3 が多いが,海水中には NaClが多くなっている。これは海中の生物が絶えずCaCO3を摂取して,貝殻やサンゴなどをつくるためである。これらの生物の死後,CaCO3はそのまま堆積して石灰岩をつくる。つまり,生物の仲介によって堆積するわけである。放散虫やケイ藻はSiO2を主成分とする殻をもっているが,これについても同じことがいえる。

溶解物質の堆積は,まったく生物のはたらきによらず,過飽和の状態からゲルとなり物理化学的に沈殿することもある。この場合は温度・気圧が関係するといわれている。

 

河川と氷河の地形

[扇状地] 山地を流れる河谷から急に平たん地に堆積物が運ばれる場合に,河谷の出口を頂点として扇形に広がった地形ができる。これが扇状地である。地形の傾斜は30°をこえるものから10°以下の緩傾斜といろいろあるが,一般的に,川が小さく運搬物の粒子が粗いと急で,その反対はゆるい。扇のかなめの部分を扇頂,広がった先端部分を扇端,その中央部を扇央という。扇状地はほとんど砂礫層からなるため,水は表流水とならず,扇頂付近から地下にしみ込んで伏流水となる。扇端地域ではこの伏流水が地表へ湧出して湧水となったり,不透水層の下へ入って被圧地下水となり,井戸を掘ると,自噴水として湧出する場合もある。

 

[三角州] 河川が海や湖に流入する付近では,流速が急激に減少する。そのため,流水による運搬力が減少し,運搬されてきた土砂が堆積して河口を頂点とする扇状地形ができる。その形がギリシア文字のΔdelta)に似ていることから,三角州またはデルタとよばれている。

 ナイル川・ガンジス川の三角州をはじめとして,大きな川はたいてい海岸付近に三角州を形成する。日本でも,信濃川・阿賀野川・石狩川・江戸川・利根川・荒川・木曽川・淀川・太田川など,その例は多い。また,三角州は古来人間生活と密接な関係をもち,特に,ナイル川,ガンジス川,チグリス・ユーフラテス川の三角州などは,文明の発祥地としても名高い。それは,平たんなこと,水が豊富であること,農耕に適することなどが有利な材料となっているためである。

 

 [氷河の作用]  積雪は寒冷な地方ではとけずに夏をこして万年雪となり,再結晶して粗粒の氷の結晶集合体である氷河氷となる。氷河には谷氷河といわれる高山の谷を流動するものと,氷床または大陸氷河とがある。後者は現在南極やグリーンランドなどで見られる。図Vは谷氷河の模式図で,高山の激しい機械的風化によって崩れ落ちた大小の岩片が,それぞれの氷河の両側に積み上がり側堆石となり,その下の氷を一時とかしながら氷河の底のほうに下がっていく。氷河は合流しても混じり合わないから図Vのように側堆石によってすじがつけられている。氷河の底に沈んだ岩片は底堆石となり,これらの岩片は氷河の移動につれて谷壁と谷底を削り,図の断面に見るようなU字谷をつくる。氷河の末端ではこれらの岩片が積み重なり,端堆石をつくり,氷河がとけ去っても氷河の達していた位置を示すことになる。

 氷河の運搬作用では,水と違ってふるい分けがほとんど行われないから,残された堆石は大小の岩塊が乱雑に入り混じったものとなり,流水の場合とははっきり区別できる。しかし,氷河の底では地熱のためにとけた氷が川をつくって流れることがあり,そこでは流水とまったく同じ運搬・堆積が行われる。

 

 

 

 

 








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