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第4節 ドップラー効果
◆衝撃波
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ドップラー効果は,音源と音,また音と観測者の相対運動が原因となって生じる現象である。静止している音源Sから振動数f,波長l,伝搬速度Vの音が出ていて,静止している観測者Oがそれを聞いているときの振動数は,音源の振動数と同じfで,fl=Vの関係が成り立つ。次に,音源Sが速度uS (SからOに向かう向きを正とする)で動いているときは,Sに対する音の相対速度はV−uSとなり,一方Sから出る音の振動数は,Sの運動状態に関係なくfであるから,波面は進行方向に押し縮められて,波長は短くなって,fl¢=V−uSとなる。この短くなった波長l′の波を聞く観測者Oが速度uOで動いているときは,Oに対する音の相対速度は V−uOであるから,Oの聞く振動数をf¢とすれば, となる。振動数の関係では,Sが静止しOがuOで遠ざかって行く場合の効果f¢= なお,上に求めた関係式は,Sから出た球面波がOに達するとき,相続く2つの波面が平行であるとみなし得る(平面波)場合にしか適用できない。それは,SがOに対して十分遠方である場合,すなわち,1周期Tの間にSの進む距離uSTがOSに比して十分に小さい場合である。 光のドップラー効果 ドップラー効果は光の場合にも見られる。たとえば,星雲からくる光の吸収スペクトル線の波長が,対応する地上元素のスペクトル線の波長より長いほうにずれること(赤方偏移)から,星雲が地球から遠ざかりつつあることがわかる。さらにこのことから宇宙が膨張していることが結論づけられている。 写真はおおぐま座の中で10億光年彼方にある星雲のスペクトルである。右から左に青から赤になっている。上下の明るい線は比較のための目盛り(鉄のスペクトル線)で,矢の先に見られる2本の暗線はカルシウムの吸収線で,星雲がもし静止していれば矢の根元に見られる。そのずれから,この星雲は1.5×104km/sの速さで遠ざかっていることがわかる。また,同様の他の測定から,遠い星雲ほど速いスピードで遠ざかっていることがわかっている。 ところで,光波の場合には,音の場合のような力学的媒質が考えられない(したがって,光は力学の範囲には含められない)ので,観測者と光源の関係は,その両者だけで完全に相対的でなければならない。つまり,光のドップラー効果は,光源と観測者のどちらが動いていても同じ結果でなければならず,それは,アインシュタインの特殊相対性理論によって,光速をcとすると,次式で与えられる。
相対論的に求めたドップラー効果は,上述の古典論とは異なるが,両者はv2/c2以上を無視できる場合には近似の範囲内で一致する。 また,電子などのように電荷をもった粒子が光速に近いスピードで,光やガラスなど光速が低い媒質中を通過すると,放射される電磁波(可視光)が円錐状の衝撃波となり,強い光を出す。これがチェレンコフ光で,スーパーカミオカンデの例のように宇宙線や高速の素粒子の検出に利用されている。小柴昌俊はこれによってニュートリノを検出することに成功し,2002年にノーベル物理学賞を受賞した。 教科書で扱う音波は原則として,振幅が変わっても音速が変化しない,いわゆる線形波動である。しかし振幅が大きくなると,密度の高い部分はより速く進むという非線形効果が無視できなくなり,進むにつれて波形がのこぎりの歯のように変化してくる(図1)。ここで破線の面は傾きが垂直で,圧力が瞬間的に増大する衝撃波面になっていることがわかる。このようにして衝撃波が形成される。
空中の飛行物体が出す音の波面は,図2の左のように「入れ子」になった球面群となり,前方は圧縮されてドップラー効果が起こる。しかし,物体が音速を超えると右のように球面群を突き破る。そして各球の包絡面上は音波の位相が全て等しいため強め合って大振幅となり,上記の効果で円錐状の衝撃波(マッハコーン)ができる。超音速ジェット機が地上近くを飛ぶと,このマッハコーンが地表をなでることになり公害問題を起こす。コンコルドが普及しにくかった理由の一つである。また昔,拳統でロウソクの炎を撃ち消すという曲撃ちがあったが,実際には弾丸が炎に命中しなくても,近くを通るだけで衝撃波が吹き消すのだそうである。
弾丸のつくるマッハコーンをシュリーレン法で撮影することができる。これは透明な物質中の屈折率の不均一を明暗として 点にはガラス板に塗った黒点を置く。レンズの間に何もなければ光は全て第2レンズの焦点に集まり,それは黒点でさえぎられるので,後方から見ると真っ暗になる。もし屈折率の勾配があると,そこを通った光線は光軸に平行にならないので黒点から外れ,明るい部分となる。弾丸の衝撃波の場合には,点光源として発光時間の短いストロボを用い,カメラのシャッターを開放にしておく。撃った弾丸がレンズの間を通過する瞬間にストロボを発光させれば,衝撃波の部分で屈折率が急に変化しているので,このような写真が撮れる。弾丸の衝撃波を撮る実験は歴史が古く,わが国でも明治時代の終わりごろ寺田寅彦が行っていたという記録がある。 水中では音速が速くまた抵抗が大きいため,超音速物体でマッハコーンを作ることは難しい。水中で火薬が爆発すると,その急激な圧力変化が衝撃波となってすばやく水面に到達し,そこで圧力が開放される瞬間に霧を発生させる。爆発による水面の盛り上がりは,そのしばらく後に起こる。また金属棒の端面に弾丸を高速で激突させ,金属中に衝撃波を起こすこともできる。 教科書p.230〜231の「超音速ジェット機が音速を越える瞬間に,衝撃波によってできた雲」の写真について,このような雲ができるメカニズムは次のように説明できる。 1.飛行しているジェット機の先端は,圧縮サイクルから始まる音源になってい る。 そのスピードが音速を超える直前は,強いドップラー効果が起きている。 2.音速と等しくなったとき,出された全ての圧縮波の先端のみがぴったり重な り,ジェット機の直前に非常に高圧な円板状の層(衝撃波,音の壁)が生じる(教科書p.231の図)。この圧力は,音波による圧力変化とは比較にならないくらい高い。 【2の別の説明】ジェット機の先端は空気をわずかに圧縮するが,飛行スピードが音速以下では,圧縮層は音波となって前方に逃げる。ところが音速と等しいと,圧力がどんどん加算されて衝撃波が立ち上がる。つまりシリンダーに空気を詰め,ピストンを音速で押し込むことと同様になる。 3.音速をこえた直後,高圧層を維持する条件が突然消える。高圧部は爆発的に膨張し(ドーンと爆発音を出す)断熱膨張で急冷され,水蒸気が凍結して雲となる(音波は基本的に断熱過程)。 より厳密には,圧縮率の非線形,音の壁の前面における断熱性の崩れなど複雑な問題もあり,全てが明確に説明できているわけではない。しかし,概して上記のような理由によると考えられる。要するに,高圧部がポップコーンのように爆発した痕跡が,雲として記録されたものと考えられるのである。
図1のように,反射板によって帰ってくる音のドップラー効果について考える。 Rは反射板,Sが音源, Oが観測者である。
音源Sから発射された音の波長lは,音源の振動数をf0とするとき, l〔m〕=(V+us)/f0 ……@ 反射板が1秒間で捉える波の個数f1は,(V+w)〔m/s〕×1〔s〕にある波数であるので, f1 =(V+w)/ l=(V+w)/(V+us)×f 0 ……A A式は反射板を観測者としたドップラー効果の式と考えればよい。反射板は音を受けることによって反射板がf1 で振動することになる。さらに,反射板はこの振動数で空気(媒質)を振動させる音源になっているので,図1の右向きに観測者に向かって音を発射している場合のドップラー効果と考えて,観測者Oの観測する振動数f2は f2
=(V−uo)/(V−w)×f1
=(V+w) (V−uo)/(V+us) (V−w)×f 0 ……B となる。 スピード違反のとり締まり機もこの原理である。図2(道路を真上から見る)のように
電磁波を発する発信器とそれを反射する自動車の速度の向きがq の角をなすとき,自動車で反射されて戻ってくる電磁波の振動数fは,B式において us=uo=0, w=vcosq として得られる。 f2=(c+vcosq)/(c−vcosq)×f 0
……C ただし,電磁波の速度は光速cとした。 C式において,x≒0での近似式 (1−x)−1 ≒1+x, (1+x)2 ≒1+2 xを用いると, f2={1+2(v/c)cosq}f 0
……D 発信器近傍での送信波と受信波のうなりの回数は, N=f 2−f 0 = 2(v/c)cosq×f 0
……E v=N c/2f0cosq
……F F式によって自動車の速度を測定している。 |


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