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第4節 光の回折と干渉
◆光の回折
◆回折格子
◆レーザー
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回折とか干渉とかいっても,両者の違いはそれほどはっきりしたものではない。 ヤングの実験のような干渉現象も回折による1つの効果であるといえるし,回折も 干渉の効果であるといえる。回折や干渉の言葉にはあまりこだわる必要はない。い ずれももとになっているのは重ね合わせの原理である。
に垂直に波長lの光がやってきたとし,スリットの幅AB=aの中点をMとする。ホイヘンスの原理によって,AB上の各点から出る2次波の干渉を考える。図の矢印の方向の無限遠点にある観測点をPとし,MからBPに垂線MNを下ろしたとき,BN=l/2であれば,BP−MP=l/2であり,また,CP−DP=l/2である。すなわち,PではAMの各点Cから出た光とBMのそれに対応する点Dから出た光とは互いに打ち消し合い,暗線が現れる。
asin q=ml (ただし,m=1,2,3,……) のとき暗線が現れることになる。 詳しい計算によれば, q=0での強度をI0とすると,任意の角qでの強度Iは, で与えられることがわかっている。この場合,0次の回折像に含まれる光量は,全光量の90%以上を占め,かつ副極大の強度は,主極大の5%以下である。 円形スリットの場合にも回折が見られる。この場合,円形の縞模様が見られ,明暗の極値を生じる方向の角qと孔の直径D,および投射する光の波長lとの間には, の関係がある。このpの値は,中央の最も明るい所の次に現れる暗い輪を1として番号をつけると,その番号によって固有な値となっている。下の表は,それらのカの値と,像の明るさと当てる光の強さとの比Iを示したものである
幅aのスリットに垂直に波長l の平面波を入射させ,入射光と角q をなす方向の回折光を考える。このスリットと平行に十分な距離を離して置いたスクリーン上の明暗模様について考察してみることにする。 図1のように,スリットABを2等分した点をMとするとき,Aでの回折光aと,Mでの回折光bが干渉して打ち消しあったとしよう。すると,AからΔaだけMよりの位置で回折した光a ¢とMよりΔdだけBよりの光b ¢も干渉して打ち消し合うことになる。このようにして考えていくと,AMから回折する光とMBから回折する光は互いに打ち消し合いq方向の回折光は干渉してスクリーン上は暗点となる。Aからb に下ろした垂線の足をHとするとき,この干渉条件は,
MH=(a/2)sinq =l/2 ・・・・・・@ asinq=l である。
図2のように,スリットABを3等分した点をMとするとき,Aでの回折光aと, Mでの回折光βが干渉して打ち消しあう場合には,AM間の回折光とMN間の回折光が干渉して暗くなる干渉条件は,
MH=(a/3)sinq =l/2 ・・・・・・A
asinq =3l/2 ということになろう。このとき,NB間の回折光が残るため,1/3の光が残ることになる。 同様の考察から,スリットをk(k=4,5,6・・・・)等分して考えると,kが偶数のときは,干渉して暗点となり,奇数の場合は1/kの開口部の光が残る。このことから,n=1,2,3・・・において asinq
=nl のとき暗点 asinq
=(2n+1)( l/2) のとき明点 ・・・C である。明点の明るさはnが大きくなるにつれ,1/nの光が残ることになるのでだんだん暗くなることが推定できるであろう。詳しい計算によると(フラウンホーファー回折という),強度分布のグラフは,下図のようになる。
参考文献;理論物理への道しるべ(下) 杉山忠男 河合出版 p147〜148 光学入門
青木貞雄 共立出版 p104〜105 ある点を同位相で出発した光は,違った経路を通って他の1点で再び会したとき,強め合ったり,弱め合ったりする。このことをヤングは実験によって示した。これに基づいてフレネルが,それまでは互いに独立であると考えられていたホイへンスの原理における2次波は,互いに干渉し合うとしたのである。 ヤングの実験で,スリットSl,S2からスクリーン上の点Pまでの経路差を求めるには教科書p.229〜232に示した方法のほか,次の@,Aのような方法もある。 @ S1S2の垂直二等分線NMとNPとのなす角をqとする。S1PとS2Pはほぼ平行と みなせるから,l1−l2≒dsinq sinq≒x/lだから,
A l12=l2+(x+d/2)2, l22=l2+(x−d/2)2, がなりたつ。したがって, l1−l2=(l1−l2)( l1+l2)=2xd lはxやdに比べて十分に大きいから, ヤングの実験は,同一光源から出た光を適当な方法で分けて別々の経路をたどらせ,再び重ね合わせて干渉させるものである。光源が点光源でなければ,干渉縞は現れない。また,第1のスリットS0の幅が広いと,干渉縞は見えにくくなる。S0の幅を広くしていくと,光源が点光源ではなく広がりをもつことに相当するからである。すなわち,S0内の各点から出た光がP点につくる干渉縞の位相差。dの値が広い範囲に分布するようになり,干渉縞の可視度が減少し,干渉縞は見えにくくなるのである。S0の幅をeとし,S0とS1S2間の距離をbとすると,干渉縞が明瞭に見えるための条件は, ヤングの実験は,装置から見てわかるように,純粋な干渉実験ではない。スクリーンに得られる干渉模様は,光源から直接やってきた光の強度分布ではなく,装置のスリットによって,1度または2度回折した2次波の干渉結果である。もっとも,スリットの幅が狭ければ,スリット自身を新しい光源と考えて,得られた縞はそれらの干渉縞であるともいえる。
この点に留意して,回折光を含まない2つのコヒーレントな光束を作りこれらに直接の干渉を起こさせたのがフレネルである。互いにわずかに傾いた2つの鏡,または小さい頂角をもつ2つのプリズムを用いた装置を下に示す。これをフレネルの二枚鏡または複プリズムという。
フレネルの鏡またはプリズムを用いた装置では,光源の2つの虚像において,互いに対応する点が,上図 (a)のような配置になっている(対応点を同じ文字で表している)から,対応点から出た光が同位相で到達する場所がそれぞれの点によって異なり,従って干渉縞の極大にわずかではあるが広がりができる。これをなくすためには,図(b)のようにすればよい。図(c)はロイド(Lloyd)の装置で,フレネルの場合よりも鮮明な干渉縞を得る。 ヤングの実験によって干渉模様が得られる。赤色光どうしを比べてみることにより,同一波長の光ではスリット間隔4が狭いほど,干渉縞の間隔が同じd=0.20mm)の場合,波長の短い光(赤に比べると青)ほど,干渉縞の間隔が小さくなることがわかる。白色光による干渉縞は,中央の明線(白色)に近い方にまず青色が現れているのがわかる。 ヤングの実験および回折格子の一連の写真は,いずれも下図のように,コリメーターレンズによって平行光束をつくり,これを2スリットおよび回折格子を通して,対物レンズ2の焦点面においたフィルムに撮影できる。いずれも拡大率2.0で,スリットとフィルムの距離l=1.8mである。
で与えられる。I0はq=0に対応する点での強度である。分母のm2はq→0のときI→I0となるようにするためにつけたものである。この式の第1項は,幅aの1本のスリットの回折強度分布を表している。第2項は,間隔dの無限に細いm本のスリットによる干渉縞の強度分布を表している。その強度分布は下図のようになる。
上式の分母の
が0になるとき,すなわち, dsinq=nl( n=0,±1,±2,………) のとき強度は極大となる。これは,教科書で導いたように,隣り合う2つのスリットを通過する光の光路差が波長lの整数倍になる条件で,この角qの方向を主極大という。主極大の間には,(m−2)本の小さな副極大が現れる。上の式によれば,m本の等間隔のスリットによってできる回折像は,“無限に細いm本のスリットによる干渉縞が,幅aの1本のスリットにより変調されたもの”ということができる。また,極大間の間隔Dxはmによらないが,mを大きくすれば,主極大の幅2dxは狭くかつ鋭くなり,回折格子に近づく。回折格子が光の実験で重要な役割を果たすのはこのためである。
上に,いくつかの型のスリットを用いた場合の干渉の強度分布を示しておく。 演示実験として生徒に観察させるためには,レーザー光を直接回折格子に入射して,その干渉縞を,教室内の映写スクリーン上に拡大して見せるのが効果的である。 生徒の一人一人に観察させるためには,安価な回折格子のレプリカを用いるとよい。ナトリウムランプの前にスリットをおき,その両側にスケールを置いた装置を,教卓上に用意し,回折格子でスリットの像を観察させる。 図(a)は水の表面に油が浮いている場合や,シャボン玉(n2=1)の場合である。このときには,MM¢面で光が反射する際に位相がpずれる。したがって,B¢CBに含まれる波数
となる。これに対して,下図(b)のような場合には,MM¢面とNN¢面とで反射する光が,ともに位相がpずれる。それで,結果としては,位相のずれは打ち消し合う。このため,B¢CBに含まれる波数とDBに含まれる波数との差が整数のとき強め合って明るくなり,半整数のとき打ち消し合って暗くなる。このときは,
となり,図の(a)と(b)とでは,全く反対の結果になる。この (b)の場合に相当するのがレンズなどの表面に施されている反射防止膜である。この場合にはqは小さいのがふつうで,q ≒0,cosq≒1としてよい。したがって, の場合に,反射率は最小となる。ここで, このようにレンズの表面に1/4波長の厚さをもち,ガラスより屈折率の小さい薄層をつけると,レンズの表面による反射を少なくすることができる。さらに,この膜の屈折率が,ガラスの屈折率と空気の屈折率との相乗平均(n1= せっけん水の薄膜による干渉縞は,薄膜の厚さ,見る方向によって,形と色が全く異なった状態を示す。膜の厚さが十分に薄くなると,干渉する反射光は弱め合うので,光は反射されずに透過し,黒色を示すようになる。干渉縞の持続時間は約2分程度で,その短い間に多様な変化を示す。膜厚は重力の影響で下にいくほど厚くなるため,教科書p.256図23の写真のように,頂点が黒くなりその下に色づいた平行な干渉模様ができる。しかし,液の対流などのため,このような平行な縞模様を得るのはきわめて難しい。よく磨かれた水平な盤の上で,2個のシャボン玉を接触させてつくると,どういうわけか平行な縞模様ができやすい。その一方を静かに割って撮影したものである。 教科書p.256図24の写真のように,コーティングは多重にして,多くの色の光が効率よくレンズ内に入るようにしているが,どうしても反射してしまう光があり,それらの光がつくる色が見える。反射せずにレンズ内に入る色の補色である。 2枚の平面ガラス板を重ねてくさび形の間隙POQをつくり,そこに屈折率nの媒質を満たす。くさびの頂角∠POQは十分に小さくする。波長l単色光をガラス板に垂直に照射して,その反射光を観察する。教科書p.258図28のように,ガラス板の面上に明暗の干渉縞を見ることができる。
この干渉縞は,くさびの下面QOと上面POで反射した光a,bが互いに干渉することによって生じる。2枚のガラス板の接点Oから距離xだけ離れた位置の媒質の厚さをdとする。くさびの上面または下面のいずれか一方で,反射光にp〔rad〕の位相のずれが生じるので,反射光の干渉条件は となる。また,図より明らかなように, となる。2枚のガラス板が接する直線lに平行な直線上で干渉条件は同じであるから,干渉縞の明線や暗線は直線lに平行に配列する。また,隣り合う明線間(暗線間)の間隔は等しく,上の式から この間隔を測ることによっても,投射した単色光の波長lを求めることができる。 くさび形の薄膜は,せっけん水で簡単に作れる。針金で枠を作り,これにセッケン水の膜を張る。膜面を鉛直に立てると重力の作用で,膜の厚さは下に行くほど厚くなる。ただし,干渉縞の間隔は,上記のガラス板の場合のように等間隔にはならず,下に行くほど小さくなる。これは,膜の厚さの増加率Dd/Dxが下にいくほど大きくなることを示している。この点は,ニュートンリングに類似している。 くさび形の薄膜でその頂角を変えたり,ニュートンリングでレンズを押さえる力を変えると,縞模様が移動し縞の間隔が変化する。これを利用すると,微小な長さを知ることができ,また長さの変化を知ることができる。 教科書p.258図28の写真は,干渉板(長さ約20cm,横幅約5cm,厚さ約lcmの透明ガラス板を2枚重ねた市販のもの)の一端に厚さが約0.01〜0.08mmの金属はくを挟んで,くさび形の空気層をつくり,これに垂直にナトリウムランプの単色光を当てたときにできた干渉縞である。ほぼ平行で等間隔の干渉縞が並ぶ。 図でレンズの下面Aで反射した光と,ガラスの上面Bで反射した光とでは,光の経路が2AB=2dだけ違う。また,空気の屈折率はガラスの屈折率より小さいから,A点の反射では位相が変わらず,B点では半波長分だけ位相のずれが生じる。したがって,光の波長をlとすると,2 dがlの整数倍に等しいとき,2つの波は弱め合って暗くなる。 2 d =ml (m=0,1,2……)
ニュートンリングの暗い輪の半径をr,凸レンズの球面の半径をRとする。直角三角形OAHに三平方の定理を適用すると, R2=(R−d) 2+ r2 ゆえに,r2=(2 R−d) dとなる。dはRに比べてきわめて小さいので, r2≒2Rdとみなせるから,
【時間的干渉性と空間的干渉性】 たとえば,マッハ・ツエンダーやマイケルソン・モーリーの干渉計において,2つの光路差がどれほど大きくても干渉が起こるかを決めるのが,光の時間的干渉性(時間的コヒーレンス)である。一方,ヤングの実験における干渉性を記述するのが空間的干渉性(空間的的コヒーレンス)である。ナトリウムランプのように干渉性の低い光源では,最初のスリットSoを置く必要がある。そして,これら2種類の干渉性は独立な要素であり,区別して理解するべきである。 光の起源は,1個の原子が放出するフォトン(光子)である。原子内の電子が何らかの原因で励起された後,エネルギーの低い状態に遷移するときフォトンを1個放出する。フォトンの持続時間tはフォトンが放射される時間であり,これに光速cをかけると,フォトンの波連の長さl(=tc)が決まる。光の時間的干渉性はこのコヒーレント長lで表される。tは光源スペクトルの線幅の逆数であり,細いほど(つまり単色性がよいほど)lは長くなる。たとえば高圧水銀灯(546nm)ではlは10mmしかないが,クリプトンのスペクトル線(605.8nm)では1mとなる。He-Neレーザーはスペクトル幅が非常に細く,lが100mにもなる。 光源では数多くの原子がフォトンを放出しているが,離れた場所から出されたフォトンは互いにランダムで相関が低い。これが空間的干渉性を下げる原因である。つ まり光源が小さいほど,空間的干渉性が高い。これがスリットSoの意味である。 レーザーの場合にはフォトンを放出する機構が誘導放射であり,出力ビーム断面の 異なる位置でも同位相となっているので,空間的干渉性が非常に高い。また,このことはレーザー光がきれいな平面波(あるいは球面波)であることと同等である。理想的な平面波は,レンズで1点に絞ることができ,1点から出された光とみなすことができるのである。これは時間的干渉性がスペクトルの細さで決まることと対応している。 ところで,干渉性がよいことは必ずしも利点とは限らない。レーザーをレンズで数cmに広げて紙面に照射すると,表面のわずかな凹凸のために干渉が起こり,細かい明暗がちらちらと見える。これはスペックル・パターンといい,結像やホログラフィーでは邪魔なノイズとなる。このためわざわざスペクトルを広げ,干渉性を低下させるスペックル除去も重要な技術になっている。逆にこのスペックル・パターンを利用して面の変位や動きの測定を行う研究も進んでいる。 光の増幅器と発振器:LASERはLight Amplification by Stimulated Emission of Radiationの頭文字で,誘導放射による光増幅を意味する。しかし,実際にはこれをアンプとしてではなく,光の発振器として使う。電気回路で増幅器の出力を入力に戻すと発振器になるように,光の場合でも2枚の鏡の間にレーザー媒質を入れると,中の微弱な光が何回も往復する間に増幅されて発振するので,光源として利用できる (教科書p.260参照) 。 縦モードと横モード:レーザー媒質そのものの特性は原子や分子のエネルギー準位で決まり,たとえばHe-Neレーザーでは632.8nmや3390nmの波長付近で発振が起こる。さらに2枚の鏡が共振器となり,鏡の間隔が半波長の整数倍となるとき定常波ができるため,その波長で発振が起こる。一般にレーザーの出力はこれらの2つの特性を重ねた,図2のようなスペクトルをもつ。これらのわずかに波長の異なる出力を縦モードといい,その周波数の違いは気柱の共鳴と同様
いろいろなレーザー:現在非常に多くの種類のレーザーがあるが,最も普及しているのはCDの読みとりやプリンター,光ファイバー通信などに利用される半導体レーザーで,波長1mm程度の赤外線を出す。加工や医療用のメスには炭酸ガスやYAGなどの大出力赤外レーザーが用いられる。また一般的な物理実験用としては赤いHe-Neレーザーや青緑のArイオンレーザーなどガスレーザーが用いられ,特殊な実験用として金属蒸気レーザーやパルス発振するエキシマレーザー等がある。色素レーザーでは波長を連続的に変えることができる。 |


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