(1) 磁界中に置いた導線ブランコ
細いエナメル線またはビニル線を数回巻いて,10cm×15cm程度の長方形のコイル
を作り,糸につるしてブランコにし,スタンドにとりつける。電源には6Vの蓄電
池を用い,すべり抵抗器(5A用)を直列につないで,電流の強さを調節する。磁石に
は,アルニコ磁石のようにできるだけ磁化の強いものを用いる。
(2) 電解質溶液の受ける力
ペトリざらに銅柱と銅環を入れ,図のように配線し,硫酸銅水溶液をペトリざら
に入れる。ペトリざらの一部をU字形磁石の間に置くと,運動イオンが磁界から力
を受けて回転する。硫酸銅溶液の表面にアルミ粉を浮かべておくと回転の様子がよ
くわかる。電流の向きを反対にすると,回転も逆になる。

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の関係で定義される。磁束密度
は,電荷qをもつ荷電粒子が速度
で運動してい
るとき,この粒子にはたらくローレンツ力
を作用する磁界を表す量として,
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の関係で定義される。ここで
は,磁界とともに存在する電界ベクトルである。
磁界ベクトル
と磁束密度
は,ともに磁界を表す量である。
が活躍するのは磁性体の分野である。たとえば電磁石の設計とか,磁石相互に
引っ張る力の計算等では,磁極や磁荷の概念を使うことなしには不可能に近い。し
かし,電流や荷電粒子の運動が主要な役割を演ずる領域は磁性体の領域よりさらに
広い。その意味でも高校段階では
を主として扱いたい。
ケルビン(Lord Kelvin 1824〜1907)は物質中のcanal fieldを用いて
を,gap fieldを
用いて
をそれぞれに定義した。
軸方向に一様な強さ
で磁化している円筒形の磁性体を例にとって考えてみる。
図(a)のように,軸に垂直にうがった薄い円板状空洞内の磁界の強さを
とする
と,円筒内の
はμ0
に等しい。空洞内の
の向きは,円筒端面の磁荷による磁
界よりも空洞面の磁荷によるものがより強く寄与するために,図示の方向をもつ。
この空洞を有する円筒(a)に対する等価電流分布は図(b)のようになる。図(b)におい
て,空洞の厚さをδとすると,空洞面の表面電流はMδ/μ0であり,δを十分小さく
すれば,Mは有限であるから,その存在は無視できる。したがって,図(b)の,円筒
を何枚かの薄い磁殻の積み重ねとみて,それらを表面電流密度
の環状電
流でおきかえたときの,真空内の環状電流分布が円筒内外の
を与えることになる。

円筒内の1点Pにおける
は,図(c)のようにPを含んでの方向に設けた針状空
洞内の磁界の強さに等しい。この空洞をもつ円筒を等価電流分布でおきかえると図
(d)のようになる。針状空洞面における電流分布は,P点に関しては無限長のソレイ
ドとみてよいから,P点に表面電流密度
に等しい磁界をつくる。一方,
円筒面の電流分布は,前述のように,磁性体内の
を与える。両者の向きは反対で
あるから,P点における磁界の強さ
は,
となり,したがって,
の関係が成り立つ。この円筒形の磁性体による磁束線と磁力線の様子
は図(e),図(f)のようになる。

多くの物質では
と
は平行で大きさが比例する。そこで,
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とおくと(χを磁化率という),
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となる。ここで,あらためて定数(1+χ)μ0をμとおくと,
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と表せる。μがその磁性体の透磁率である。強磁性体以外の物質ではχは10-6程度
のオーダーなので,μはμ0とほとんど一致するが,強磁性体,たとえば軟鉄ではχ
=100程度と異常に大きい。
rの円周上を速さvで円運動しているとき,I=ev/2πrの環状電流が流れていること
になる。この環状電流が遠方につくる磁束密度を考えると,μ0evr/2すなわち
μ0emvr/2mの磁気モーメントがつくる磁束密度に等しくなる。ここでmv
rは角運動
量である。角運動量はh/2πを単位として量子化される。したがって,磁気モーメン
トもμ0eh/4πm(ボーア磁子)を単位として量子化される。陽子は電子と比較して質量
mが桁違いに大きいので,普通は原子核のつくる磁界は無視でき,電子の磁気モー
メントだけを考えればよい。
電子の回転運動にはスピン(古典的には自転に相当)と原子核の周りの軌道運動
(公転に相当)がある。その両方が物質の磁性と関係がある。
物質を磁界中に置いたとき,磁界と同じ向きに磁化をもつ場合を常磁性,反対向
きに磁荷を持つ場合を反磁性,磁界がなくても磁化をもつことができる場合を強
磁性という。
@ 反磁性
物質に磁界をかけたとき,一種の電磁誘導により,電子の軌道運動が変化し,か
けた磁界に反発する磁界を物質がつくるのが反磁性である。すべての物質に反磁性
があると考えられるが,その磁界は非常に弱く,常磁性や強磁性を持つ物質では打
ち消されて現れない。閉殻構造をもつような原子やイオンでは反対向きのスピンの
電子が2個ずつ対をなし,軌道運動も逆まわりの電子が対をなし,物質の磁気モー
メントが打ち消されている。したがって,反磁性だけを示す。
A 常磁性
遷移金属や希土類元素は部分的にしか満たされない軌道電子があり,その磁気モ
ーメントが打ち消されずに残っている。また,O2分子のように電子スピンが同じ向
きになっている物質も磁気モーメントが残っている。これらの物質に磁界をかける
と,電子の磁気モーメントが磁界から力を受け,磁界の向きを向くことにより常磁
性を示す。
金属では,磁界をかけることにより,伝導電子のスピンの磁気モーメントが磁界
から力を受け,磁界の向きを向くものが多くなり,常磁性を示す(Pauliの常磁性)。
常磁性の磁化は反磁性の磁化よりも大きいが,強磁性に比べると桁違いに小さい。
B 強磁性
鉄,ニッケル,コバルトなどでは,量子的な交換相互作用により,隣り合う原子
内の電子スピンの向きがそろったほうがエネルギーが低くなり安定となる(協同現
象)。そのため,結晶全体で同じ向きにスピンがそろうほうが安定となる。しかし,
大きな物体全体でスピンの向きがそろうことは難しく,同じ向きのスピンが並ぶ1
〜100ミクロン程度の小さな区域(磁区)に分かれている。磁区の磁化の向きはバラ
バラで,普通,大きな固体全体としては磁化は示さない。その強磁性体に外から磁
界をかけると磁壁が移動し,磁界の向きの磁化をもった磁区は広がり,逆向きの磁
化を持った磁区は小さくなる。そのため,固体全体として磁化を持つようになる。
磁界を十分強くすると,初めの磁区の磁化の方向が磁界と一致していない磁区では,
最後に磁区の中で磁化の回転が起きて磁化が増す。その後は磁界を強くしても磁化
はほとんど増加しない(飽和磁化)。この後,磁界を弱くしていくと磁区はだんだん
元の状態に戻ろうとするが,磁壁が途中で結晶内の不純物や結晶の歪などにひっか
かり,完全には元に戻らず,外からの磁界を0にしても磁化が残る(残留磁化)。
鋼鉄のほうが軟鉄よりも不純物(炭素など)が多く,急激に冷却されるために結晶
の歪も多いため,鋼鉄のほうが軟鉄よりも残留磁化が大きいので永久磁石になりや
すい。
なお,永久磁石を熱すると熱的な乱れが大きくなり,磁化が減少する。磁化が乱
れると協同現象も弱くなるので温度が上昇すると急激に磁化が弱くなり,ある温度
(Curie温度)以上では磁化が消えてしまう。
と磁界の強さH」のところを参照されたい。
透磁率μの数値は単位系が変わると変わる。物理的な意味のあるものは透磁率で
はなく比透磁率である。比透磁率は比誘電率に対応したものである。高校生の場合,
「比誘電率の意味はコンデンサーの極板間に誘電体を入れたとき,電気容量が真空
の場合の何倍になるかを表すもの」という説明をすると分かりやすい。同様に,た
とえば「鉄の比透磁率は,ドーナツ型のコイル(トロイダルコイル)に電流を流し,
コイルの中に鉄心を入れ,鉄心に非常に狭い隙間(ギャップ)をあけたとき,その隙
間にできる磁界が鉄心を全く入れない場合の何倍になるかを表すもの」という説明
が分かりやすい。すなわち,荒っぽい言い方をすると「コイルに鉄心を入れたとき,
磁界の強さが入れる前の場合の何倍になるかが鉄の比透磁率である」ということで
ある。隙間をあけると,隙間の空間にできる磁界はコイルを流れる電流がつくる磁
界と鉄心の断面に現れた磁極がつくる磁界の和となり,強磁性体では磁化が大きい
ので隙間の磁界も非常に強くなる。
なお,鉄のような強磁性体では,外部磁界が強くなると磁化が飽和したり,外部
磁界がなくても残留磁化があったりするのでBはHに比例するわけではなく複雑な
関係がある。しかし,軟鉄などの残留磁化が少ない物質で外部磁界が小さいときは,
BはHに比例すると考えても良い。このときの透磁率を初期透磁率という。
ンを用いて簡単にできる。定量的な実験方法もいくつか工夫されている(山田盛夫
「平行電流間の力」物理教育Vol.21,No.3)。平行電流の代わりに平行電子線間の力
を定量的に測定することは,そのクーロン斥力のためにきわめてむずかしい(福井
常勝「平行電子線間の力」物理教育Vol.22,No.1)
平行電流間の力の求め方は,教科書に示したように,I2のつくる磁界だけが単独
に存在していてI1はその磁界から力を受けると考える。このとき,I1自身もまた磁
界をつくっているという事実は一切考えていない。このような考え方が正しいのは,
I1のつくる磁界の効果がI1の位置で消失するからであることが証明されている(小
林稔「電気力学」岩波全書p.44〜45)。
平行電流I1とI2にはたらく力を,電流I1を流れる1個の電子に注目して考えてみ
よう。実際に起こっている現象はただ1つで,I1中の電子はI2のほうへ引き寄せら
れる(I1とI2が同じ向きのとき)。それを実験室にいる人が見れば,I2の外側には電
界はないので,I1の電子は磁界からローレンツ力evBを受けていると観測する。と
ころが,I1中の電子の側から見ると,自らは静止していて,I2の針金が速さvで走
りすぎるだけである。電子は静止しているから磁気力はない。このとき電子は,I2
の線上に分布している正の電荷によって電気力を受けると観測する。静止系ではI2
の針金は電気的に中性であるが,運動系から見ると,特殊相対性理論により,長さ
の方向に短縮するため,針金を構成する正のイオンの電荷密度が大きくなって見え