トップ理科総合B 改訂版2部 生物の変遷と自然のつり合い>第3章 生物と環境>第2節 生態系の成り立ちと物質循環

2節 生態系の成り立ちと物質循環

 

9 世界の陸上の群系と気候との関係

13 生態系における炭素の循環

15 ゲンゲの根粒()と根粒菌()

17 分解者(キクラゲ)

18 森林の生態系におけるエネルギーの流れ

図19 いろいろな生態ピラミッド

生態系

作用と反作用

食物連鎖

炭素の循環

窒素の循環

脱窒素作用

空中窒素の固定

生態系におけるエネルギーの流れ

生態ピラミッドの正立と倒

分解者と共生するシロアリ

ヒトと生態系


 

   教科書の主な図表の解説                           

9 世界の陸上の群系と気候との関係

地球上における森林や草原の分布は,降水量と気温に密接な関係がある。

・熱帯多雨林年平均気温20 以上,降水量2100mm以上に発達する森林。常緑樹よりなり,つる植物やシダ植物が繁茂して,密林になる。

・雨緑樹林……年平均気温 18 ℃以上,降水量1000~2400mm に発達し,乾期には落葉する。季節風林,熱帯季節林ともいわれる。林床にイネ科の草本,つる植物などが繁茂する。

・常緑広葉樹林年平均気温12~20℃, 降水量1000~3200mm に発達する森林。いわゆる照葉樹林。

・落葉広葉樹林年平均気温 3~14℃, 降水量 500~2400mm に発達する森林。いわゆる夏緑樹林。

・針葉樹林年平均気温-6~5 ℃,降水量200~2000mm に発達する森林。シベリア地方に発達する針葉樹の大森林をタイガという。

・草原年平均気温 -6℃以上 降水量 3000m以上に発達する。特に降水量が比較的多いところに発達する草原がサバンナ ( サバナ ) 熱帯 あるいは亜熱帯でみられ イネ科植物が主で ,しばしば低木などの樹木が点在する。サバンナよりも温度が低く,冬季寒冷で,降水量も少ないところに発達するのがステップとよばれる草原である。ステップにも低木がまばらにある。

・ツンドラ……森林限界よりも北にある荒原で,針葉樹は生育できない。コケ類,地衣類が主である。

・砂漠降水量 300mm 以下(ふつう200mm 以下 ) の亜熱帯および温帯にできる荒原。乾荒原ともいわれ,一般に植物は生育していない。

 

15 ゲンゲの根粒()と根粒菌()

右の写真は,根粒菌を顕微鏡で約3000倍に拡大したものである。根にある根粒は,ふつう肉眼で粒に見える大きさであり,内部の根粒菌は,棒状,T状などの形をしている。

 

17 分解者(キクラゲ)

 植物や動物の排出物や遺体を利用し,それらを分解するとき生じるエネルギーで生活している生物を分解者という。細菌類や放線菌・カビなどの菌類など微生物が分解者である。このはたらきによって有機物が無機物に変えられるので,この無機物は再び生産者が利用できる栄養源となる。この意味から,分解者を還元者とよぶこともある。

 

18 森林の生態系におけるエネルギーの流れ

 生産者 (緑色植物)は,光のエネルギーを用いて,二酸化炭素と水を材料としてグルコース(ブドウ糖)をつくり,さらにデンプンやスクロース(ショ糖)として体内に蓄える。これらは,養分としてエネルギーをもっている。したがって,太陽のエネルギーが化学エネルギーとして養分に蓄えられ,これが消費者へ順次利用される。その際,エネルギーの一部は,生活活動のために消費されて,熱のエネルギーとなり,外界へ放出されるので,流入したエネルギーのすべてが次の段階へと流れるわけではない。つまりエネルギーは一方向へ流れて消費され,再び利用されない熱のエネルギーになる。

 

19 いろいろな生態ピラミッド

  左の図は北アメリカの草原における「個体数のピラミッド」である。ふつう上位の栄養段階の生物ほど個体は大形になるが,個体数は少なくなっていくので,ピラミッド形になる。

  右の図はアメリカのシルバースプリングの「生物量(現存量;生物体の重量)のピラミッド」である。一定面積の全生物を採取して求めた単位体面積あたりの生物量をもとにした生態ピラミッドは,場所や冬季の例外を除けば,逆転することはない。

  生態ピラミッドには,ほかに「生産力(生産速度)のピラミッド」がある。

 

   トピックス                           

生態系

 ある地域内では,生物のみならず,無機的自然も互いに影響しあって,1 つのまとまりをつくっている。このようなシステムを生態系という。イギリスの生態学者タンスリーが用いた用語である (1935)

 生態系の概念の中には,物質循環やエネルギーの流れが組み込まれている。また,生態系を構成している生物群集相互,さらにそれをとりまく無機的環境との間で各種の情報も交換され,伝達され,それらによって生態系は成立しているのである。生態系は,自然生態系,農地生態系,都市生態系などに分けられる。自然生態系は海洋生態系,森林生態系,砂漠生態系など,群系によって分類されている。

 

作用と反作用

 火山の爆発などで生じた岩石には,まず地衣類がはえる。地衣類は酸を出して岩石の一部を溶かす。岩石が細かくなった荒れ地に草本や木本の植物がはえてくる。こうして,落ち葉や植物の枯れた部分は,荒れ地に有機物を与え,また根は土壌の粒子を細かくする。さらに土中の根粒菌・アゾトバクターなどは,空中窒素を固定して有機物の形にする。一方,ミミズ・線虫などの動物は,有機物を土といっしょに食べ,不消化物を排出することにより,土壌の粒子を細かくするようにはたらく。

 このように,土壌は生物のはたらきにより変化し,またそれにより有機物や水分を多く含むようになって,植物の生育を助ける。

 

食物連鎖

 生物が生きていくために必要な食物(エネルギー )は,炭酸同化を行う植物に端を発し,捕食・被食をくり返しながら,一連の生物群集内を通って移行していく。この関係を食物連鎖とよぶ。移行の各段階で,エネルギーの80~90%が失われるから,段階の数(鎖の数)4~5段階に限られ,6を超えるのはまれである。

 食物連鎖のようすを詳しく図に表してみると,多くはきわめて複雑なものとなり,これを食物網とよぶ。植物と動物を食物とする雑食動物を含む生物群集では,特に複雑な食物網となる。

 

炭素の循環

 炭素の存在する量や循環する量を正確に測定するのは容易ではなく,研究者によりその値には違いがあり,その違いも2桁に及んでいる。次の図は,ボリンの1970年のデータに基づいて描かれたものである。

 大気中には0.03%の二酸化炭素が含まれているが,この値から推定した大気中の炭素の総量は,約7×1014kg になる。海洋中に,二酸化炭素,炭酸塩,あるいは炭酸水素塩として溶けているものの中に約3.5×1016kgある。つまり,大気中の約50倍であり,それにより大気中の二酸化炭素の量が調節されている。なお,岩石中にも,約2×1019kgある。

 光合成で生物体に取り込まれる有機物の量も研究者により一定しない。しかし,毎年 2 × 1014kg( 炭素の量で 8 × 1014kg) ぐらいという研究者が多く,ほぼ同量が呼吸により大気中に戻される。

 

窒素の循環

 生物体を構成するタンパク質,核酸,クロロフィルなどは,窒素を含む物質である。これらの中で,量的に圧倒的に多いタンパク質には,窒素が平均して10% 含まれている。植物体の窒素含有量は,種類・体の部分・環境条件によって異なるが,乾燥重量の4% ぐらいのことが多い。これに対して,動物体は6~10%以上含まれている。したがって,食物連鎖の過程で,動物体に窒素が濃縮されるということができる。

 窒素の循環に関して,それぞれどれくらいの量の窒素が移動するかは,はっきりしていない。しかし,大気中の窒素含量と比べて,生体を通って循環する窒素の量はわずかである。

 

 [脱窒素作用] 土壌中のある種の細菌類は,硝酸塩を還元して,気体窒素(N2)を空中に放出する。この脱窒素作用は,有機物が多く,しかも酸素の少ない場所に限られて起こるので,生態系全体では,生産者への硝酸塩供給が不足するほど大きな影響はない。

 [空中窒素の固定] 空中の気体窒素を植物が利用できる窒素化合物の形に固定するはたらきをもつのは,マメ科植物の根に共生する根粒菌,アルカリ性土壌に多い好気性のアゾトバクター,酸性土壌に多い嫌気性のクロストリジウムと,池や沼に見られるラン藻類である。

 

生態系におけるエネルギーの流れ

 1 つのまとまった生態系の例として釣り池をあげると,そこには生産者 (植物プランクトン),一次消費者 (動物プランクトン,ユスリカの幼虫),二次消費者(双翅目昆虫),三次消費者(クロマスの一種サンフィッシュ,バス),四次消費者(ヒト)という栄養段階が見られる。利用可能な太陽エネルギーを730,000kcal/(m2・年)〕とし それぞれの生物の示す生産力を1つの流れでみていくと,下の表のようになる。なお,生産者 の効率は1%であるが,光が水に反射したり吸収されたりするので,地上での効率よりは低くなる。

 

 

栄養段階

生産力

効率(%)

太陽エネルギー

730,000

50

生産者

一次消費者

2次消費者

3次消費者

4次消費者

7,400

900

83

30

1.0

12.1

9.2

36.1

13.3

 

 

生態ピラミッドの正立と倒立

 食物連鎖を構成する生物個体数は,一般に下位の生産者が最も多く,ついで一次消費者,二次消費者と少なくなっていき,三次消費者がいちばん少ない。この個体数をピラミッド型に示したものが個体数ピラミッドであり,エルトン(1927 )が示したので,エルトンのピラミッドともいう。

個体数ピラミッドは正立のピラミッドであるが,寄生生物にみられる寄生連鎖では,上位のものほど体は小形になり,個体数はふえるので,そのピラミッドは倒立する。 個体の重量×総個体数,すなわち栄養段階ごとの生物量で示したピラミッドを生物量ピラミッドという。この場合は寄生連鎖でもピラミッド型になる。

 一定時間あたりの生産量をもとにして作ったピラミッドを生産量ピラミッドという。この場合,総生産量で示す場合と,純生産量で示す場合があるが,一般的には 純生産量で示すことが多い。生産量ピラミッドは,物質の移動がない閉鎖系であるならば必ずピラミッド型になる。

 エネルギーの流量や生産量に注目したエネルギーピラミッドは,倒立することはない。

 

分解者と共生するシロアリ

 シロアリは,節足動物門昆虫綱シロアリ目に属する。日本では,ヤマトシロアリ,イエシロアリが多く存在する。シロアリの腸内には原生動物が共生しており,消化酵素のセルラーゼにより木材にあるセルロースを分解して,分解産物をシロアリに提供している。

 シロアリは,女王アリ・王アリ・兵アリ・働きアリなど分業された社会生活を営む。

 

   サイエンスBOX                           

ヒトと生態系

  3種の生活様式における食物の利用効率を比較してある。この場合,人間が1年間に1m2あたり利用する炭素は,漁猟(海洋漁業)0.3g,牧畜3g,農耕30gとなり,それぞれ10倍ずつ効率が高くなっている。つまり,食物の利用効率では,農耕が最高ということになる。しかしいうまでもなく,利用効率だけで食物は判断できない。牧畜や漁業で得られる動物性食品は,栄養価が高いことなど,農耕による植物性食品より優れている点があり,またそれぞれの環境に応じてどの生活様式が適するかも決まる。

 

 

<参考文献>

オダム,生態学の基礎 上・下」,培風館  

松本忠夫,「生物科学入門コース7 生態と環境」,岩波書店

水野寿彦,「動物生態の観察と研究」,東海大学出版会 

沼田 真,植物生態の観察と研究」,東海大学出版会 

西口親雄,ブナの森を楽しむ」,岩波新書

湯本貴和,熱帯雨林」,岩波新書

吉良竜夫,「生態学から見た自然」,河出書房新社

岩城英夫訳,「生態学キーノート」,シュプリンガー・フェアラーク()

 

 

 

 








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